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8.精神分裂病になる事があるか ASの人が分裂病をおこす可能性は、一般の人に比べて、ほんのわずか高いだけ。実際、ASの子供を200名診ても、その後分裂病を起こしたのは一人だけ。(1995)最近のASの成人の研究でも、分裂病の兆候を示すようになるのは最大でも5%。(1991) ASの青年の中に、一時的な能力の低下、社会的引きこもりの増大、衛生観念の欠落、自分の趣味への強い没頭などを起こす人がいる。これは、精神分裂病の発症に先立つ後退期との解釈も出来る。ASと精神分裂病には明らかな相違があるが、いくつかの単純な誤りが重なれば、誤った診断がつくこともある。 ASの人には、生活上の主たるストレス源は人との接触であり、ストレスの増大は、通常では不安障害や抑鬱をもたらす。 精神分裂病の人には、それよりもっと広範囲のストレス源があり、ストレスが過大になると、幻覚や妄想などの精神分裂病のハッキリした症状を表すようになる。 精神分裂病の症状の一つは、幻覚を経験すること。精神科医から、『何か聞こえますか?』と聞かれ、ASの人は、『聞こえる』と答える事がよくある。これは質問を文字通りに解釈して、精神科医が発した質問の背後に隠れた意味を認識してないことによる。続いて、『ここにいない人の声が聞こえますか?』と聞かれる事もあるでしょう。それにも『聞こえる』という答えが返ってくるかもしれない。更に続けて、それは隣室からの人の話し声が聞こえるという根拠に基づいた答えだったと分かる。 ASの特徴の一つは、他人の考えを理解するのが難しい。そのため、謝って人に悪意があると思い込む事がある。相手にそのつもりがなく、偶然の出来事かもしれないのに、自分に向けて意図的にされたと解釈する。自分の性格や社会的な能力について人が悪く言ってるのを、実際に耳にする事もあるかもしれない。これが、被害妄想を思わせるまで、人を強く疑うようにさせてしまう事もある。しかし、これは現実を歪めるというよりも、むしろ『心の理論』の獲得や、意図を正しく認識する問題に関する事。 ASは、精神分裂病に伴う話し方や思考の障害と表面的によく似た、独特の言語技能の質的特徴を持つ事もある。そういう人達は、社会的な場面でも、またトイレや浴室内にいる間などのプライベートな時にも、自分の考えを音声化して喋る事がよくある。自分がその日に行った会話を繰り返してることもある。また、自分を第三者の立場に置いて話す傾向もある、つまり、自分の事を『私』などの適切な一人称で示すのではなく、『彼(彼女)は』を用いる。それが、その独り言を、特に強く感情を込めた『会話』を繰り返す時には、いかにも奇妙なものにする。 ASのもう一つの特徴は、情緒的な成熟が遅れる。だから、もう子供でもないのにティーンエイジャーや若者達が、未熟で子供っぽい、空想の世界の話をあたかも現実であるかのように信じ続けている事がある。その人達の出来事の説明には、魔法や空想が混じる事があり、彼らは事実と作話の区別が困難。こうした現実に対する独特の、未熟な見方の為に、ASのこの面を知らない臨床医は、それに惑わされ、妄想のある証拠と受けとることがある。 謝った診断がどうして作る出されるかは、簡単に理解出来る。残念ながら、治療困難な、非定型慢性精神疾患、とくに、精神分裂病と診断された人の中で、最終的にASと認められる人は、かなりの割合になる。最初の精神分裂病の診断には疑問もあったが、本人や家族が専門的な援助を必要とした時には、精神科しか頼れる機関がなかった。その治療は、社会的な行動や理解を伸ばすという事よりも、おそらく、鎮静剤の投与や施設への収容看護だった。 最後にASの若者達のごく一部に、精神分裂病の本当の兆候を現してくるとがある。しかし、そのようなエピソードはたいてい短期間で、試験などのストレスを受ける特定の出来事と結びついている事が多い。もし、親が本当の幻覚や妄想の兆候に気づいたらASについて詳しい精神科医を受診させる事が不可欠。 10.高機能自閉症とASの違い ASとレオ・カナーにより最初に定義された自閉症との間には、社会的相互作用や言語、長期的な発達経過などとして、明白な違いがあると認めてる。しかし、ASと高機能の自閉症とでは違いがあるか。現在、両者に意味のある違いはない事を示す結果が出てる。両者には、違いよりも同じ事の方が大きい。 自閉症とASは、双方とも同じ境目のない連続体上にあり、そこにはどちらの用語を使うかに迷うような、診断上の『グレーゾーン』に属する子供もいるはず。やがて、自閉症とASの境界線を見つけ出すだろう。現在、実際的なアプローチをとる、つまりサービスの提供を受けられる診断名を用いるのが良い。自閉症は手当や補助金が支給されることがあるが、ASは難しい。臨床家は、サービスを受けるのに遅れや支障がないように、自閉症の名称を使う事がある。地域では、高機能の自閉症と診断されて、別の地域ではASと診断されることが起きる。 11.女児には症候群の独特の現れ方があるのか 男児の割合が女児の約10倍。地域によっては4:1としてる。自閉症で見られる同じ比率。 なぜ、女児は少ないか? 男児の方が、社会的技能の激しく偏ってプロフィールをもち、とくにフラストレーションやストレスが高い時は、破壊的・攻撃的な行動に流れるような社会的欠陥をもつ傾向がある。こうした特徴は、親や先生方によって気づかれやすい、その子供はなぜ普通に出来ないのか相談に来る。対称的に、女児は友達と一緒に遊ぶ能力が比較的あって、社会技能のそれほど偏ってプロフィールは見せない傾向がある。ASの女児は、後から遅れて遅延模倣をすることで、集団内の動きに付いていく能力が高い。彼女らは、他の子供を良く観察して、そっくりそのまま真似る、その動きは、他の子供よりタイミングが悪くて、自発的ではない。この違いを実証する糸口となるデータは、自閉症での性差の研究から得られてる。 この症候群の女児は、変わっているより、むしろ未熟だと見られやすい傾向がある。その独特な興味の対象は、男児に見られるほど特異でも、強固でもない場合もある。だから、彼女達は一人きりで空想の世界に浸っていても、クラスの秩序を乱すような行動はとらない『目に入らない』子供と述べられる。女児は男児より診断される事が少ない傾向があっても、無言で苦しんでいる事が多い。 女児にとって、一つ重大な問題は、青春時代には日常的な友人関係の基盤が変わること。おもちゃで一緒に遊んだり、想像力を使って遊ぶのに代わって、青年期の友人関係は、実際の体験や、対人関係、感情などについての内容が圧倒的におおい、会話に基づくようになる。ASのティーンエイジャーの女の子は、小学校の校庭でやっていた遊びを続けたくて、以前の友人達との関わりは薄くなっていく。もはや同じ興味を分かち合う事は出来ない。更に、新たな問題となるのが、同年代の男の子達からの異性を意識した働きかけにどう対処するか。会話をするだけなら受け入れられても、身体的接触はもちろん、ロマンチックな恋愛の観念に当惑したり、嫌悪したりする。 何人かのティーンエイジャーのASの女性は、仲間との活動に入りたい一心から、自分の顔の一部であるかのような『仮面』を意図的に付けていると述べる。学校では、他人に常に微笑みを浮かべているように見えても、仮面の下では、不安と恐れ、自己喪失の感情に襲われている。彼女達は、必死で他人に受け入れられよう、他人を喜ばせ気に入られようとしている、自分の内面の感情を人前で表す事が出来ない。 小学校の年代では、典型的なASの特有を示していた女児が、自閉症~ASの連続体に沿って成長し、現在の診断基準で彼女達が直面している問題は捉えきれなくなるまでになるのを見届けた事がある。男児より女児の方が長期的な予後が良い。彼女達は、人との交わり方、自分の問題を目立たなくする方法を、男児より年少辛上手く学習出来るよう。 いつまでも続くと訴える問題は、『他人と感じが違う』こと。 彼女達との接し方は、表面的には自然に見えるが、自分達が機械的で、直感的には出来ないと思ってる。他人にはどうやって互いに親密となり、あまり考えなくても友人関係を保てるのかと悩み続けてる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.09.21 17:05:08
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