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前々回の「今日の言葉」にも書きましたが、上場しているということは誰もが企業の持ち分を買うことができるという事実を日本の経営者はもっと認識しなければいけないと思います。
敵対的買収といえば、最近では「M&Aコンサルティング」「スティール・パートナーズ」「ライブドア」といった名前が挙がるかと思いますが、倫理的に見てアコギであるかどうかという問題は別にあるとしても、資本主義のルールに則ったものであれば企業買収そのものは批判される筋合いはありません。 むしろ、経営側に「自社が買収されるかもしれない」という「当事者意識」がなかったのが問題なのです。とりわけ、資本主義の論理を理解していないサラリーマン経営者にこの傾向が強いのではないかと思います。日本において敵対的買収の対策がまだまだなされていないことも一つだと思います。 ひとことで言うと「ガードが甘い企業が多い」ということになります。 株主構成(特定株比率・浮動株比率など)から買収される可能性があり得る企業が、敵対的買収を防ぐ方法は2通りあります。一つは「株価を上げること」で、もう一つは「価値を下げること」です。 最近の敵対的買収の流れを受けて、日本でも敵対的買収を防ぐ対策としてアメリカのケーススタディーを研究する流れがあります。ビジネススクールでの教義としては標準的な話なのですが、そこでは以下のような対策があげられています。 (1)ポイズンピル 敵対的買収が起きた場合に有利に株式を購入できるなど特別な権利を既存の株主に付与 (2)ゴールデンパラシュート 買収後に経営陣が解任された場合に、巨額の割増退職金を支給 (3)スコーチ・ドアース 買収者にとって魅力的な会社財産などを第三者に売却し、会社の魅力を低下させ買収意欲をそぐ (4)ホワイトナイト 友好的第三者(ホワイトナイト)による買収・合併・対抗的TOBなどを行う (5)パックマン・ディフェンス 敵対的な買収者に対して、逆に買収を仕掛ける (6)ゴーイング・プライベート 会社の上場廃止、株式の非公開化 「敵対的買収を仕掛ける企業が必ずしも既存株主に対して敵対的でない」ことを考えると、買収を仕掛ける側と仕掛けられる側のどちらが株主利益(もしくは、倫理的には、従業員の利益も含めた社会的利益)を重視しているかということが重要な議論になろうかと思います。 上記の対策は、「本業を向上させる」「自社株買いを行う」「配当を増やす」といった、株主価値(もしくは、株価)を高めるための「王道」とは違い、どちらかというと「奇策」に近いものであると私は思います。 しかも、上記にある対策は株主価値を低下させる危険もあり、敵対的買収の本場アメリカでも訴訟沙汰になっているケースが見受けられます。 「ポイズンピル」が必ずしも既存株主の利益になるとは限らないですし、ましてや「ゴールデンパラシュート」なんてナンセンスだと思います。他の「奇策」についても、もっと問題点を考慮しなければならないと思います。 しかしながら、欧米の理論を表面的に受け入れ易い日本の学識者などは、「株主利益をどう考えるか?」という本質を議論することなく、「こうした対策を本格的に導入すべきである」という方向性に走る可能性が高いと思います。 それは以下のような流れからも分かります。 ****************************** 内閣府経済社会総合研究所の「M&A(企業の合併・買収)研究会」は9月、「ポイズンピル導入の考え方について早急に検討するべき」などと提言した。経済産業省も、米国などの事例を研究する「企業価値研究会」をスタートさせ、来春までに提言をまとめる方針だ。 ****************************** 「株主利益を向上させるための経営者側の努力を促す政策を作る」という考え方はないのでしょうか?この国の政府はつくづく無能な連中だと思いますね。そして、そこに腰巾着のように張り付いている御用学者達も無能だと思います。そして、自社が買収されることに対して、買収者を非難する経営陣はさらに無能だと思います。 最期に、以下の言葉をそうした「無能な輩」に捧げたいと思います。 今日の言葉: 「敵対的買収を防ぐ最大の方法は、株主利益を考えた経営政策と資本政策を実施することである。」 P.S. 買収を仕掛ける側も「(和を尊ぶという)日本の文化的背景」を少し考慮した形で、まずは「株主提案」あたりから入ればいいのでと思ったりもします。まあ、そんなに話が分かる経営者ばかりであれば「力ずくで」なんてことにはならないのでしょうけど。 全般的に「不平を言う株主が少ない」ことは事実だと思います。こうした株主の権利を主張することが当然の流れになってくれば、日本の株式市場も本格的に明るさを取り戻すのではないでしょうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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