出版時点で直ぐに手に入らないうちに随分時間が経ってしまいました。そうこうする内にいくつか書評を見る機会がありました。
・村上春樹にしては読みやすかった
・色のないという意味は名前に色を表す漢字が入っていない
・ここでいう、色は個性を意味している
などなど。。。
遅ればせながら、思いがけない貴重品を手にした気分で、じっくり読もうとわくわくでした。読み始めると結局ノンストップで一気読み。久々の村上春樹の世界にどっぷり。大満足でした。
良くも悪くも村上春樹の世界でした。わくわく感というか新鮮味にはちょっと欠けるように感じました。副題をつけるとすれば「国境の南。スウェーデンの森」でしょうか。これは皮肉っているわけではなく、読みながら「ノルウェイの森」と「国境の南・・・」を思いおこしたからです。
過去の出来事が現在までの自分に影響を与える。多かれ少なかれ誰にでもあることだと思います。でも、それを断ち切らなければ自由な未来は開けない。きっと、それがテーマだと思います。それを断ち切るための巡礼だったのです。「ル・マル・デュ・ペイ」
ここから少し、いつもながらのネタバレです。
わくわく感に欠けたように思えたのは、主人公の内面と過去の比較的地味な回想を中心に話が進み、冒険が少なかったことが原因でしょうか。あえて冒険と言えば、自分を裏切った過去の3人の友人を16年ぶりに訪ねる行動で、これが巡礼に例えられているのでしょう。これにより、あの裏切りは何故だったのか、どんな誤解があったのかなど分かり易く解けてゆきます。これが、村上春樹にしては読みやすいと感じさせるのでしょう。
結論の出ない部分は、仲良し5人組の1人であった美人「ゆずき」を殺害した犯人。巡礼を勧めた年上の彼女「沙羅」と主人公は最後に結婚するのか。この2点などがあります。前者は犯人が誰かは問題ではなく、「ゆずき」は可哀相な最後を遂げてもうこの世にはいないという事実が重要なわけです。もう失われたものなのです。「ノルウェイの森」の直子のように。そして、主人公と沙羅との結婚は、いつものように読者に委ねられています。「ノルウェイの森」の小林緑との関係のように。だだし、巡礼により過去と向きあい、それを断ち切った主人公に光が見えてきたような気がしました。
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