(RDF方探 その1) ドップラー電波方向探査とは
+以前からV.UHF帯の方向探査実験として取り組んでいたテーマでしたが、ふと思い立って2018年冬、10数年ぶりに改めて機材を整備してフィールド実験をしてみました。電波方向探査の対象とした周波数帯は、中波の500kHzから短波の15MHzまで。16ケのLEDをサークル状に並べて方向表示器にしました。ドップラーシフト方式の電波方向探査とは電波方向探査には、単一指向性アンテナを使いその受信強度が最大の方向(あるいは最小の逆方向)を発信源と特定する方法があります。これは受信電波の強弱で到来方向を判別する最もポピュラーな手法ですが、今回実験を行ったのは電波の強弱ではなく「電波のドップラー効果」を利用して発信源を探査する方法です。以下 順を追って説明いたしますが、ドップラー方式はその探査可能な周波数帯域が極めて広く取れるのが特徴です。指向性アンテナを使用していないので、共振も整合もシビアに考える必要は無く、とりあえず聞こえさえすれば方向探査が可能です。 youtubeで実験の様子を公開いたしておりますが、中波ラジオ放送局の方向探査も、簡易な設備で実現させています。写真は本稿で紹介する電波方向探査アダプター(以下”本機”と略)の本体部分となる「LED表示部」です。 このほか設備全体では、対象電波を捉えるための「方探アンテナ」、そして目的電波を受信・復調する「受信機」の3つの主要部から成り立ちます。最初に述べたとおり、製作工程についても極力簡単になるようアレンジしております。以下、本機の動作原理と製作の説明 さらに実験結果のレポートと続けていきたいと思います。「ドップラー効果」 学生時代に物理の時間で習ったという方も多いでしょう。本機で採用した電波方向探査の原理は、電波の伝達時間から生じるドップラー効果を利用して行います。衛星通信をされる方は、超高速移動する衛星から発射される電波が本来の周波数よりズレて聞こえてくるのはご経験の事かと思います。逆に送信側が静止していて、受信する側が超高速で送信側に向かって(逆に遠ざかって)移動した場合でも、相対距離の変化が同じならば受信電波には同様の現象が現れます。それでは受信側が直線移動ではなく、(図1)のようにある一定の円周に沿ってぐるぐると周回移動した場合を考えてみましょう。すると送信元に向かう速度が最も速いA点、送信元から遠ざかる速度の最も速いC点、そして送信元との距離変化が殆ど無いB点とD点が周期的に現れます。この時の受信周波数は、ドップラー効果の影響を最も受けるA点ではプラス側にシフトし、同じくC点ではマイナス側にシフトします。B点とD点では受信周波数の変化は最小となります。ここで整理すると、図1の 円の中心点から見て 受信波のシフトが「プラスからマイナスに変化する円周上の地点」、つまりシフトが最小のアンテナの位置(B点)を通過する延長線上に、電波の到来方向があるということが判ります。したがって周波数の偏移がゼロになる位置を電気的に求めればよい訳ですが、高周波信号のままでは扱いにくいのでFM受信機を使い、電波のシフト変化を低周波のトーン信号に変換します。図2㊤ が受信波のイメージ図です。お判りのとおり「変調周波数がアンテナ回転周期と等しい」、「変調波の位相が電波の到来方向によって変化する」などFM変調波そのものです。スピーカー端子から「ピーーー」というトーン音が得られますので、このトーン波の位相とアンテナ回転周期との位相差を求めることで電波の到来方向が判るという仕組みです。ざっくりとした説明でしたが、以上が本機の動作原理となります。ちなみに方探が可能な電波は上記の動作原理から、AM,FM,CWなど連続した搬送波のある電波形式です。また、実際にアンテナそのものをドップラー効果が発生するような超高速で回転させるのは現実的に不可能です。本機では複数設置したアンテナを電気的に切り替えることで「疑似的な」ドップラー効果を発生させています。以下、方探本体部分の動作説明、回路図の解説と続きます。