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2017年01月22日
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カテゴリ:鈴木藤三郎
伏流水利用による荒蕪地開拓(前半) 

 かくのごとくして伏流水の利用と機械開墾とにより本地開拓上の基本的解決を得まして更に農場の経営に移ったのであります。農場の経営としては、ここに図面(第二図)がありますとおり、普通の耕地整理計画とたいした変わりはありませんが、ただ区角割のごときものが一つ機械耕作をいたす関係上、あるいは大規模な収穫作業に適するために、100間四方、すなわち3町歩くらいの大区割を採用いたしております。どの他、交通に関すること、村落の設置、農場の諸建物の建設等は普通にやるところと余り変わりはないのであります。かくして農場建設ができたのでありまして、これらの農場の経営というものはいかなる方法を以てするか、ということでありますが、先ほど申し上げた2万4千町歩にわたるところの大面積の自営農場は約13の地方に分れております。その間は6,70哩(マイル)の距離のあるところもあるのでありまして、この農場の管理経営は技術的の管理と、経理的の管理との、2種に分けて私どもは考えております。この技術的管理については10数年来いろいろな研究考察をいたしまして、前記のごとく各地に散在することろの大面積の農場を1つの系統の下に管理する方法を立てております。精しく申しますれば経営すべき農場の全体に通じて土地のコンディション、水利の関係、労力の関係、またその土地に適するところの甘蔗なり他の農作物の状態、その他栽培に関係する各種の要素を考慮いたしまして、なお長い間の甘蔗耕作上の経験実績を参酌いたしまして、1つの耕作に関する基準を設定しているのであります。これは大体のフォームを主としてソイルの方から分けておりますが、おもなフォームは5つばかりあります。そのフォームによりまして、すべての耕作作業、例せば整地のこと、植付のこと、施肥のこと、引いて各地の圃場のマネジメントを画一したやり方でやっているのであります。これにつきましてはいろいろな犠牲を払い、また困難に遭遇した点もあったのでありますが、最近におきましては、すべてそれが馴致されまして、農場の管理経営が技術的に非常に簡単に、また年々の改良改善にも相当都合のいい状態になっているのであります。
  そこで一言付け加えて申し上げたいのでありますが、この農場におきまして灌漑水の用途に付きまして1つの新生面を開いたのであります。それはジャバにおいてもハワイにおいても、その他の糖業国におきましても、甘蔗の灌漑というものはケーン(サトウキビの茎)のグロース(成長)に対する問題として取り扱われているのでありますが、この土地が特別なる土壌の構成である関係かも知れませんが、乾燥期において甘蔗がやや水分の欠乏を呈している時に、灌漑水の供給をいたすことによりまして、ケーンの健康状態が回復すると同時に、糖分が非常に高くなるのであります。驚くべき糖分の上昇を見た例もあるのであります。すなわちイリゲーション・ウォーター(灌漑水)によりまして、ケーンのシュークロス(蔗糖)・パーセントを高めるということであります。言葉を換えて申しますと、土壌水分のコントロールを甘蔗蔗糖分との間に重大なる関係があることを農場技師石井喜一氏が発見したのであります。よって最近はこれに類する農場では計画的に灌漑の使用によりまして畑から取る砂糖の量を多くする事にしております。申すまでもなく、製糖工程におきましては、工場内において、CとHとOの1つの合成によって砂糖を作り得るのでありません。農場におけるケーンの中にあるシュークロスそのもの以外には、砂糖は得られないのであります。故に圃場におけるすべての耕作管理の目標は立毛甘蔗のシュークロス・パーセントを高めるということがあるのであります
 更に今一つ付け加えて申述べたいのは、本地のごとき荒蕪せる原野が水分の補給と機械耕耘等により、年と共に生産を高めて行く事についてでありますが、この生産力の増進は土地改良の進行によるのであります。すなわち土地の肥沃度が増すのであります。この肥沃度の増加について台北帝国大学の足立教授のご協力を得まして化学的にも微生物学的にも研究を進めておりますが、それによりますと、地力増進は土壌中の窒素炭素の増加とだいたい一致しております。なお特に土壌中におけるところの微生物の種類と数値が非常に殖えるということが目立っているのであります。よって私見としてこれの微生物に関する事を土地改良上の考察に加えているような次第であります。
 以上、私は伏流水の利用によって、甘蔗耕地の開拓、並びにこれに関することをごく概略申し上げた訳であります。熱帯地における農業土木施設、土地改良施設というものは、豊富なる熱と光との関係などあいまって比較的その効果を早く挙げうるし、またその効果も顕著なるものがあるように思います。ただし、ただいま申し述べました事例で云々する訳でありませんが、総じて私はそう考えているのであります。故にこの方面の学術の研究と、その応用の進歩が産業開発の上に将来大いに必要であると信じております。今や我が国の新しい経済的南支政策は大いに進まんとしているような時期であるように聴いております。どうかこの際に、一層これらの方面の学術の研究と、その応用とが、力強きベースとなって南方政策の上に実行進展されんことを深く希望するものであります。
これを以て私の講演を終わることにいたします。長らくご清聴を煩わしました事を感謝いたします。





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最終更新日  2017年01月22日 17時09分00秒



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