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2006年05月07日
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カテゴリ:文芸情報
邂逅(その二) 昂二は、ゴツゴツとした岩場の浜から、コンクリートで護岸された関根浜港へと歩みを進めた。新聞で見た有美は昔のフックラとした顔立ちがやせこけて見えた。果たして今はどんな生活をしているんだろうか?結婚はしているんだろうか?色んなことが昂二の頭なかをよぎりながらも足は一歩一歩、港へと近づいていった。港には一艘の船が横付けされ、使用済み核燃料が搬入されていった。ハングルで船名が書いてあったが昂二は読めなかった。今日は韓国からの使用済み核燃料の搬入らしい。とフェンスの横に一人の女性がいた。その女性は警備の人間に仁王立ちされながらも、必死で放射線の測定をしていた。 昂二は近づいて使用済み核燃料搬入車へ測定器を向けているその肩をポンと叩いた。驚いて振り向いた顔は、紛れもない有美そのものであった。 パチパチと浜小屋で、焚き火の音がはじける。暗闇に有美の顔が紅く染まり浮かび上がる。「貴方は国税省に入って国家の下僕になったんでしょう。その貴方が誰も寄り付かないこの関根浜になんの用なの?」と有美は尋ねた。「いや、今日は仕事で来た。君の仲間らしい高橋隆一郎君の仲間がいないか査察に来たんだ」昂二は、さきほど隆一郎に言った同じ言葉を有美に吐いた。「嘘しゃべれべ駄目だべさ。わいあんたさ、さっき言ったよな?あんた有美姉ちゃんさ逢うためにわざわざ来たんだべって、ワイ一人だって青森でへったべさ」と隆一郎が間髪いれずに反論してきた。「いや、そんなことはない、ほら業務命令書だってここにある」と先ほど見せた命令書を有美に見せた。有美は、それを手に取り命令書を読み、「これはあなたが勝手に高橋君を一味に仕立てて来たんでしょ。だって高橋君はずっと一人だったし、貴方に捕まった日も、私に査察で現行犯で捕まったこと話してくれたは、その時も『一人だって査察官に言った』って私に話してくれたわ」 「ウッ」、思わず昂二は言葉に詰まった。隆一郎だけではなく、有美にまでもここに来る目的を明確に否定されたのだ。 昂二は「ここに来る目的はあくまでも査察だ。だがそれも今終了した。私が推察したように高橋隆一郎は一味ではなく単独犯だったようだな」といいつくろった。「へえーじゃ、もう査察の目的は終わったなら早く青森さ帰ればいいべさ。なしてあんたここさいるんだ。おかしいべな」。またも鋭い隆一郎の突っ込みが来た。有美も「そうよ。査察だけなら、別に関根浜港に私を訪ねにこなくてもよかったでしょ。なんで来たの港まで?」その顔はいたずらっ子のように、昂二を追い詰める。「ああ、わかったよ。言うよ。数日前、お前が載っている新聞を見たんだ。ビックリするとともに、あの学生時代の環問研のことが思い出されてきた。そして君が言った『国家の下僕』という言葉がまだ胸に突き刺さったまだということに気がついた。そう思うと矢も立てもたまらず、君に逢いたくなった。それで隆一郎君には悪かったが、単独犯ということを知りながら、『一味がいるらしい』という上申書をあげて、出張命令を出してもらった」。昂二は胸にたまった思いを一気に吐き出した。「ホーラ、やっぱしそうだべさ、あんたの顔に『有美姉ちゃんに逢いたい』って書いてるしてな。ハッハッハッ」。隆一郎の笑い声が船小屋に響きわたった。 大学卒業後の有美の話を総合するとこういうことだった。有美は大学を卒業すると神奈川県内の小学校の教師になった。しかし、環境問題に対する思いは棄てきれずに大学時代から親交のあったグリーンピースジャパンにボランティアとして参加していた。しかし、2008年の六ヵ所再処理工場の放射能大放出事故により、学校にいるべきではないと決意し、グリーンピースジャパンの専従スタッフとなった。それからは六ヵ所再処理工場の大事故の影響もあり、あっというまに原発・再処理路線からの撤退が決まり、いまや稼動中の原発はなくなり、民生用の原子力施設問題は、バックエンドの核廃棄物問題に集約されるようになり、五年前から、函館に一人で住み、一人で放射能測定をしているとのことであった。 有美の話は大体そういうことであったが、昂二が聞きたかった肝心な事は入ってなかった。昂二は思い切って聞いた「失礼だが、君は結婚しているのか?」と聞いた。「まさか、こんな活動していてプータローみたいな私と結婚する人なんてどこにもいないわ。それより貴方はご家族は青森にいるの?」と有美は逆に聞き返してきた。 昂二は「ああ、妻と長女と三人暮らしで青森に住んでいる。大抜擢で青森に来たが、連れてこなきゃよかったと後悔している」と思わず答えた。 有美は途端に顔付が変わり昂二に「あなたは、だから国家の下僕なのよ。この青森県にだってまだ35万人の人々が暮らしているわ。でもあなただって知っているでしょ。六ヵ所再処理工場大事故以後の青森県を。確かにこの国は本当に酷くなったわ。でもそれ以上にこの青森県は酷い状況だわ。まさに棄民だわ。あなたはいいわよね、何年かすれば、この汚い打ち棄てられた青森地域から去ることが出来て。でも、ここに暮らす人たちは、もうどこにもいけないのよ。行ける人はもう行っているわよ。あなたにはそれがわかる?」 昂二は、いつも漠然と思っていたこの打ち棄てられた棄民同様の人々のことをズバリ言われて、「そりゃ、そうだが・・・」と口よどんだ。有美は続けざまに、「貴方は六ヵ所再処理工場の操業を機にこの運動から身を引いたわね。でも私は違った。これから大変なことが起こる。そう思ったの。だから教師をやりながらも、ボランティアで六ヵ所再処理工場の問題を追ったわ。そしてあの事故よ。あの事故を機会に私は、教師をやめ。グリーンピースジャパンの専従になったわ。2017年の原発のすべての廃炉のあとは、残ったのは、ここの中間貯蔵施設と六ヵ所の最終処分地問題よ。すでにここは日本人のみんなから忘れさられているけど、ここは、もう世界の核のゴミ捨て場になっているわ。アメリカ・ヨーロッパはもう原発やめたけど、アジアじゃ、まだ原発やっているわ。とにかく世界から原発をなくすこと。そして核のゴミをこれ以上増やさないこと。このために私はここで活動しているの。あなたは、国税省の査察官で数年で、青森からいなくなる人。私は、世界の原発を止めるために活動している人間。住む世界が違うわ。あなたは棄てられた人々の思いなんかわかるわけないでしょ。そう思ったらサッサッと青森に帰って、カワイイ妻と娘の相手をしなさいよ」。有美の言葉は昂二の胸にグサリと突き刺さった。(続く) 

 

前に掲載した「棄郷・帰郷」は以下の通りです。

棄郷・帰郷 2020年アオモリ秋・国家の下僕・邂逅まで

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604050002/

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604060002/

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604070001/

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604080001/

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604100000/

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604110001/

http://plaza.rakuten.co.jp/junpeiaomori/diary/200604210000/

 






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最終更新日  2006年05月07日 20時21分35秒
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