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カテゴリ:映画
1月16日新宿ミラノ座にて
男女雇用機会均等法によって、職場における男女の差別はなくなりました。しかし、これは立前であって、実体は依然として、採用、昇進、給与、などに差別が存在します。 人は法のもとに平等ですが、人種、性別、国籍、家柄、学歴など、さまざまな要因が理想を拒んでいるのは、誰でも知っているでしょう。社会はユートピアを実現するほど成熟していないのです。まして男社会に放り込まれた女性は、必然的に従属した存在にならざるを得ません。 本作「スタンドアップ」は、実話をもとにした社会派ドラマです。男30人に対し女1人という鉱山会社に、ジョージーは炭坑夫として就職しました。父も働いている炭坑です。 彼女は二人の子持ちですが、長男はレイプされて生まれた子供。長女の父親は乱暴者で、夫の暴力から逃れるために離婚しました。女手ひとつで、二人の子供を育てているのです。 これだけでも壮絶な人生、と小市民の私などは慄然とするのですが、新しい職場は、想像を絶する世界でした。差別というにはあまりにも苛烈なセクハラが待っていたのです。 ジョージーは美人であるだけに、よけい男たちの注目を浴び、セクハラの対象にされたのでしょう。職場だけではなく、あらぬ噂をたてられ、町の人たちも敵にまわります。ホッケー部の長男は、パスを回してもらえない、という嫌がらせを受ける始末でした。 ジョージーは闘う決心をします。彼女はウーマンリブの闘士でもなければ、組合活動の先鋭的分子でもありません。ごく普通の主婦です。この映画が、多くの人の共感を呼ぶのは、こういうヒロインの造形にあるのではないでしょうか。 ストーリーは法廷場面をアクセントにして、一種の回想という形で進行します。登場人物は多彩ですが、簡潔な描写の中に、それぞれの性格が描きわけられていて感心しました。監督のたしかな手腕が伺われます。 「モンスター」でオスカー女優になったシャリーズ・セロン。ここでも平凡ながら芯の強いシングルマザーを演じていい味を出しています。単なるお飾り的美人女優の域を完全に脱しました。 監督は「クジラの島の少女」のニキ・カーロ。共演はフランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、シシー・スペイセク、ショーン・ビーン、リチャード・ジェンキンスなど、芸達者な連中ばかりです。 全編にボブ・ディランの曲が流れるのも、われわれの世代にとっては、うれしい限り。ストレートな選曲ですが、「時代は変わる」というメッセージを伝えたかったのでしょう。 ラストもベタながら感動的でした。あまり期待していなかったので、得した気分になったものです。働く女性はもとより、独身の青年も見る価値はあるでしょう。秀作、とお薦めします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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