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2008.08.22
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14 ~ケースケ~ first kiss

ミリが出て行った音を聞いて、俺は目を開けた。寝転んだままの体勢で、大きくため息をつく。
今日はミリ、自分から、俺のすぐそばに来てくれた。寝顔を見つめてくれた。
でも、俺には触れられずに・・・。そのためらいを、葛藤を、濃厚に感じた。

少しでも、俺に触れてくれたら、すぐに抱きしめようと思っていたけど。

・・・だけど、いいよ。無関心になられてるわけじゃない。

俺だって、ミリの寝顔を見ながら、葛藤した。
ミリに触れたい。抱き寄せたい。抱きしめたい。
キスしたい、キスだけじゃなくて、もっともっと、いろんなことしたい。

だけど、、やっぱり、ミリの意思に反しては、できなかった。

寝顔だけ見詰め合う俺達。心は、寄り添っているのに。体は、、拒絶、、されてる。

あ~、、、、、、、、まだ、恋人じゃなくて、ただ、添い寝、だった頃と、どっちがマシなんだろう?
。。。考えたって仕方ないよな。。くだらない比較を頭から追い出す。
まだ時間は早かったけれど、俺は思い切り伸びをしてから、起きることにした。
そして、ダイニングテーブルの上に、ミリからのメモ。

『ケースケ、おはよ。毎日お疲れ様。体、、大丈夫?朝食作っておいたから、時間があったら、食べて行ってね。行ってきます。 ミリ。』

俺はミリの用意してくれた朝食をしっかりと食べながら、、、何度もそのメモを読み返す。
愛してる、、は、ないんだよな。。、今の状況なら、、、当たり前、、か。。
いや、てか、こうなる前から、・・・なかったっけ?
・・うん、なかった。
そうだよな、いっつも、いっつも、俺だけが、、愛してるって。
ミリから愛してるなんて言ってもらえたこと、ほんと、ほとんど、ない。。ような。。
キスだって、抱き寄せるのだって、求めるのだって、いつも全部俺から、、で。。
俺が、、俺から、しすぎ、、なのかなあ。。
だって、ミリの顔見るだけで、もう、隙さえあればすぐに、抱きしめてキスしたくなっちゃうからな。。
あ~、だめだっ。頭を振って、妄想を追い出す。
顔見てなくても、思い出すだけで・・じゃないか、と、苦笑する。

ミリの作った朝食。野菜もたっぷりで、うまい。
きっと、俺の体のこと考えてくれてる、ミリの愛情だらけだからだよな。

そう、ミリは、、今も、きっと、俺を愛してるはずなんだ。
こんなに拒絶され続けていても、それだけは、確信できる。

だったら・・・・、俺は思う。

兄貴の死んだ後は、ミリが俺を選んでくれるまで、ただの添い寝で気長に2年も待ったけれど、もしかして、またそんなに?、なんて、思うだけで、ぞっとする。てか、もう、ミリの唇も、吐息も、全部を知ってしまった俺には、ガマンなんて、到底無理な話だよ。
まして、ミリの心は今も俺にあるのに。

体だけの拒絶・・・。

こうなったら、荒療治でいくか。
ミリ、覚悟しとけよ。

と、思いつつ、俺もそれなりに、覚悟を決める。
俺は、食事を終え、いつもどおり片付けながら、
もしかしたら、「危険」かもしれない賭けのことを考えていた。


×××××××××××××××××××××××××××


15 ~ミリ~ first kiss

私がベッドに入ってから帰ってくるケースケ。そして、目覚める前に出かけるケースケ。
それ以外の日は、私は無理に用事をつくってでかけたりして・・。
寝顔を見つめ合う以外、全く顔を合わせない日々が続いたある夜。

部屋に帰ると、遅く帰るとメモを残していたはずの、ケースケがいた。
ソファに寝転んで台本を読んでいる。寝転んだ首をこちらに向けて、にっこり、
「お帰り」
といわれ、でも、私の方は笑うこともできずに、すごく、ぎこちなく、
「ただいま・・。早かったの、、ね?」
といった。
「ああ、今日は、予定より早く終わったんだ」
前なら、すぐに駆け寄ってきてくれて、抱き寄せてキスをしてくれたけれど。
それは、、今は、ないままで。

ケースケはソファに起き上がるだけで、こちらにはこない。
私は、自分勝手なこと、よく分かってるけど、哀しくなる。
あのベッドでケースケの手を「イヤ」って拒絶した夜以来、ケースケは、もう、私に、手を伸ばそうともしない。
伸ばされても受け入れられないんだから、、一緒なんだけど。。。
そのこと、ケースケもきっとよく分かってるんだろうな。。
結局、すれ違いが続いて、、、というより、私がすれ違いを続けて、、ろくな会話もないままだった。
ただ、顔を合わさず、会話もなく、お互いに触れることもない、生活。。メモとメールをやりとりするだけの日々。

ケースケ、何も言わないけれど、、、もう、このままでいいと思ってるのかな。。
私は、、このままじゃ、、。。
このまま、、いつか、ケースケの心まで離れてしまったら。。。
そんなこと、耐えられるはずがない。

だけど、今だって、ケースケの手も体も、もちろんキスも、
受け入れられるようになったとは思えないから、
私からは、、どうしようも、、なくて。。

だからって、私、、ケースケに、、どうして欲しいのかな。。
ただ、何か、、きっかけが欲しい。
キスシーンのこと、吹っ切るきっかけが。。。
だって、ケースケを失うことなんて、、、できないもん。

ぼんやり考え込んでいたら、ケースケが、すぐそばに来ていた。
「ミリ?」
突然近くに感じて、つい、後ずさる。頭では、また傷つけちゃうから、いけないっ、って思ったけど、体が勝手に。
ケースケは、私の反応を見て、自分も半歩下がった。手を胸の前でこちらに向けて広げて言う。
「ごめん。驚かせちゃった?近づきすぎた?何もする気ないよ。大丈夫だよ。触らないから」
私は、申し訳なくて、俯いたまま、で、何も言えない。
ケースケは、そのまま少し離れた場所から、私をもう一度呼んだ。
「ミリ」
私は、顔を上げた。私を優しく見下ろす微笑んだケースケの瞳。声が、、うまく出ない。ケースケが話し出す。
「ミリ、俺、今夜から、実家で寝るよ」
「・・・・ぇ?」
声になるかならないかのか細い声しかでない。ケースケは、優しく微笑んだまま、
「ミリが、、あんまり辛そうだから・・。だから、しばらく実家に帰るよ。そうしたら、ミリももう、眠れないのに寝たフリしたり、用もないのに、出かけたりしなくて済むだろ?ミリ、もっと、体、休ませなきゃ」
ケースケは、、全部、、分かって。。私が、、、ケースケと顔を合わすのを避けていたこと。。

私は一体、ケースケをどれだけ傷つけてきたんだろう。

余りの申し訳なさに、私は目を閉じた。ケースケは、静かに続ける。
「ミリ、俺、正直、、どうしたらいいか分かんないんだ。今のミリに、、何をしてやればいいのか。・・ただ、ミリを前にすると、バカみたいに、何度も愛してるって言ったり、抱き寄せたり抱きしめたり、キスしたり、ミリにそういうことしたいってしか思いつかないんだ。今だって、そんな不安そうな、泣き出しそうな顔見ると、抱きしめたくて、大丈夫だって、ずっと背中撫ぜてやりたくて。。だけど、ミリがそれを望んでないならできない。、、してやれない。だから、せめて、、、そんな顔させてる原因の、俺自身を、ミリの前から、取り除くよ」
ケースケ、、、。唇が震える。顔から血の気が引いていく。
「ごめん。辛いこと全てから、ミリを守ってやりたいのに。その原因が俺じゃ、、離れてやることしか、、ないんだよな。・・って、こんな言い方じゃ、まるで、別れ話みたいか。・・違うよ?ミリが、、俺のこと、受け入れられるようになったら、すぐに戻るから。」
ケースケの言葉が、耳を流れていく。ケースケは、ふっと笑って、
「・・さっきは、えらそうに、ミリが辛そうだから、なんていったけど。ほんというと、俺も、、辛いんだ。そばにいるのに、触れられないこと」
話しながらケースケは、一歩ずつそっとそっと私に近づいて、そっと私に手を伸ばす。そして、私の髪に、頬に、肩に、触れないように、そっと手をかざして動かす。
体が硬直する私。拒絶ではなく、・・・快感で。
・・・触れられてもいないのに、どうして、こんなに感じるの?
ケースケに、触れられたい。ただ、もう一歩だけ、、前に出ればいいのに。
・・でも、足は動かない。、、、怖い。また拒絶して、傷つけてしまったら。。。?
ケースケは優しい声で続ける。
「もう、、そろそろ、ガマンできそうにないんだ。、、前は、ずっと添い寝だけで、ガマンできてたのにな。あんなの嘘みたいだよ。俺、自分を抑えられなくなるのが怖いんだよ」
ケースケは手を握り締めて、自分の体にそって下におろした。
「隣の部屋で寝てたって、俺の心も、、体も、ミリをずっと求めてる。だから、、、このままだと、ミリに、、無理矢理、、ヤっちゃいそうで。・・だから、ミリ。俺、実家に帰る。もう、これ以上、ミリを苦しめたくないんだ。」
何も答えられない私に、ケースケは、
「愛してるよ、ミリ。俺の気持ちは、絶対に、変わらない。ずっと、ずっと、待ってるから。俺に、、会いたくなったら、いつでも、連絡して。夜中でも、飛んでくるよ。そんな日が、きっと来るって信じてる。・・それだけ、ちゃんと顔を見て言いたかったんだ。」
そう言って、笑って、、、
「じゃ、な。ちゃんと飯、食えよ?」
ケースケは、部屋を、出て行った。

私は、呆然とその場に立ち尽くす。
立ち去ろうとするケースケの大きな背中に飛びつけたら。
しがみついて、行かないでって、大声で泣けたら。

だけどだけど、ケースケの体に触れること。
それがどうしてもできなくて。

でも、やだ。
ケースケ、やだよ。
ケースケのいない部屋で眠るなんて。
一人ぼっちでここにいるなんて。
こんな風に離れ離れになったら、私たち。。
ケースケの気持ちだって、体だって。。
置いてかないで、ケースケ。
体も全部消えてしまって、心だけぽつんと取り残されたような気持ちになる。

気づけば、私は、子供みたいに声をあげて泣いていた。

ひとりぼっちの部屋で。


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最終更新日  2008.08.22 00:14:19
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