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October 8, 2023
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カテゴリ:医学

核医学治療

絹谷 清剛教授

放射性医薬品を病変に

検査や治療のために体内に投与する放射性物質のことを「放射性医薬品」といい、これを利用した治療が「核医学治療」です。金沢大学大学院医薬保険学総合研究科長を務める絹谷清剛教授(核医学分野)に聞きました。

 

全身治療を行うことが可能

放射性医療品は、特定の臓器や病変に集まりやすい性質をもった物質に、放射性同位元素(ラジオアイソトープ=RI)を受けたものです。

同じように放射線を使った放射線治療が、体の外から放射線を当てるのに対し、核医学治療では、「放射性医薬品」を静脈注射や経口投与することで、体内の病変に取り込ませて治療を行います。

古くは、1940年代から放射性ヨウ素が甲状腺がんの治療に使われています。

外科手術と異なり、痛みはほとんどありません。また、その病変に医薬品が集まるので、他の治療薬よりも副作用が少ないといった特徴があります。

加えて、放射線治療では、照射された局所にしか効果が期待できませんが、核医学治療では、全身の病変に薬剤が行きわたるので、はっきりと病巣が分からない場合でも、全身治療が可能で、「標的アイソトープ治療」とも呼ばれます。

目的の病変に集中した治療効果が期待できるものとして、化学療法で使われる分子標的薬と性質がいています。

 

海外に渡航し治療をするケースも

現在、国内で行われている核医学治療は、「ヨウ素131」を使った甲状腺がん、「イットリウム90」を使った低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、「ラジウム223」を使った骨転移した去勢抵抗性前立腺がん、「ルテチウム177」を使った悪性線形内分泌腫瘍の治療などです。

現在では、国内で承認されていない「アクチニウム225」による「PSMA」といった進行性前立腺がんの治療のために、身体的な負担や経済的な負担を負ったうえで、海外渡航をされているケースもあります。

近年、諸外国では、「治療(therapeutics)を組み合わせた「セラノステイクス」といった造語が脚光を浴びています。

放射性医療品は、治療のだけでなく、シンチグラフィー検査、陽電子放射断層撮影(PET)検査などでも使われます。特に、がん診療においては、治療と診断を同時に行えることには大きなメリットがあり、新たな放射性核種を使った研究や治験も進められています。

また、治療効果が非常に高いアルファ線核種の登場は、大きな話題となりました。

 

基準を満たした施設で実施される

核医学治療は、国が定めた基準を満たした施設でのみ受けることができます。

甲状腺がんの治療では食事制限などが必要になるものの、治療前に特別にしなければならないこともありません。

また、核医学治療で使用される放射線(アルファ線、ベータ線)の飛程は数㍉程度と短いため、家庭や地域で患者さんに接する方々への被ばくは非常に小さく、外来での治療も可能になっています。

しかし、アルファ線やベータ線と同時に、ガンマ線が放出される核種を使用する場合、周囲の被ばくを避けるため、一定期間の専用病室での入院が必要になります。

なお、専用病室からの退院は、放射線の量が法律で定められた退出基準を下回ってからで、日本では、海外よりも厳格な数値が定められています。

増加傾向がある甲状腺がんの患者数や治療数に対する専用施設の不足が課題になっています。

また近い将来、承認されるであろう前立腺がんの治療でも同様な課題が指摘されています。

 

大半を海外からの輸入に頼っている

もう一つの課題は、現在、国内で使用されているRIの大半を、海外からの輸入に頼っている点です。

医療の進歩によって、世界各国の需要は増えているものの、各国では生産に利用中の原子炉は古く、いつ運転停止になるか分かりません。

実際に、2009年には、カナダの生産用原子炉のトラブルがあり、需要が逼迫したことがあります。また近年では新型コロナによる運輸停止など、供給が不安定な状態が続いているのです。

新しい製造用原子炉や加速器の製造・維持には膨大なコストが必要となります。そのため、米国やカナダ、欧州連合(EU)やオーストラリアなどでは、国が主導して医療用放射性核種の製造を推進、放射性医薬品の確保に努めています。

新型コロナのワクチンや治療薬などの例と同様に、国内でのRIの安定供給は、急務になっています。

そこで、2020年8月には、私が理事長を務める日本核医学学会など7医学界で日本原子力研究開発機構の試験研究炉「JRR3」と、停止中の高速実験炉「常陽」を利用して、RIの国産化を進める要望書を国に提出しています。

昨年5月の参議院の決算委員会では、公明党の秋野公造参議院議員、三浦信祐参議院議員が国内製造に向けた予算確保に政府に要望。関連予算確保につながり、道が開かれました。

今後、研究が進むことで、使用できる核種の種類も増加。対象となる疾患も増えることが見込まれています。

核医学治療は、「核医学」という名前から想像するイメージとは異なり、体に優しい治療であることを知っていただきたいと思っています。

 

 

【医療Medical Treatment】聖教新聞2022.5.30






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Last updated  October 8, 2023 06:46:36 AM
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