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民主主義のルールと精神 ヤン=ヴェルナー・ミュラー著/山岡由美 訳
メディアと政党の自由な議論を喚起 民主主義とは何か。はたして私たちはそこに明確な答えをもっているだろうか――。本書はこの問いかけから始まる。ty者は『ポピュリズムと何か』で有名になった米国の政治学者だ。 英国のEU離脱、米国のトランプ現象を見て、〝民主主義は危機に瀕している〟との感を抱く人は多い。そのような中で著者は「私たちは民主主義国の制度を再検討しなければならず、特定の人物を辱めることにうつつを抜かしてはいけない」と警告する。権力者を罵倒しても、危機は去るわけではないからだ。 右派左派を問わず、ポピュリズムは〝権力者への監視〟という、まっとうな行為を装って市民を分断すると著者は語る。自分たちだけが「真の人民」「サイレント・マジョリティ」で、〝自分たちに同意しない人々はニセモノだ〟という論法を使うのだ。 では、民主主義を守るためには何が重要か。著者が着目するのは「民主主義のインフラ(社会基盤)」としてのメディアと政党だ。こうした仲介機関の必要性を認めたい人々は、これらを「人民の声を書き換えてしまう」「歪曲の可能性を秘めている」と見なし、先導的な政治家は自らのSNSやブログに直接、人びとを動員しようとする。 一方、メディアや政党の本来の役割は、人々の活発な議論を喚起し、それぞれの意見の違いを微調整することにある。この点はSNSが政治活動から切り離せなくなった今だからこそ、再認識されるべきであろう。 代表制民主主義への信頼が揺らぐ時代に抗して、著者はその可能性を疑わない。他方、政党や政治家が政治的選択肢を示す上では、新たな創意工夫やルールをつくり直すことも必要と指摘。ユーモアを交えながら、前に向かう道を示す一書だ。(東)
▲「民主主義と縁を切ることを決めるのはどうやら人民ではなく、エリートのようだ」と著者は語る。
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Last updated
February 27, 2024 07:20:36 PM
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