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カテゴリ:文化
日本で楽しむ異国飯 山谷剛史(ライター)
怪しいけれども大丈夫 世界的な新型コロナの蔓延で、海外旅行にいけなくなってどのくらいになるでしょうか。中国・昆明市を拠点に、中国をはじめ、ベトナムやタイ、インドなどで取材をしてきた私も、感染拡大とともに、日本に帰国して、海外には出かけられなくなりました。 そんな時、たまたま降りた、JR小岩駅(東京)で出あえたのが「異国飯」だったのです。 海外旅行の醍醐味は、観光と食事です。よくある旅行番組を思い出してください。街歩きして刊行したあとは、必ず食べるシーンが。そこで外国語のメニューを見て、料理をオーダー。この時、かたことの言葉でたどたどしく注文して、なんとか現地の料理にありつく。誰もが海外旅行でよく経験することだと思います。 そんな〝仮装海外〟を楽しめるのが「異国飯」です。多くの人鬼、そんな楽しさを味わってもらいたく、近著『移民時代の異国飯』(星海社新書)を出しました。 「横浜や神戸の中華街に出かければ」「近所にインドやタイ料理屋もある」と思われるかもしれません。確かに、そこには外国のメニューが並んでいて、外国人が働いているかもしれません。でもそれは、あくまでも日本人向けの店。 そうではなく、日本在住外国人による、外国人のための食堂があるのです。ともしると、あまりに怪しいため日本人は入りにくく、その結果、外国人ばかりが集う店になってしまう。でも、日本印を排除しているわけではありません。店としてやっている以上、ビジネスなのだから、多くの人に入ってもらいたいはずなのです。 海外旅行と違うのは、日本語が通じるという点。程度の差こそあれ、そんな店の共通語は日本語です。 以前、ウズベキスタンの店で食事をしていて、南アジア系の人がやって来て「アッサラーム・アクム」と挨拶を交わした後、日本語で会話をしていました。ある意味「ハワイ並みに日本語が通じる」の外国飯屋なのです。 そんな店に出かけて、そこにいる外国人とワイワイ楽しく会話できるなら、ある意味、海外旅行よりも楽しい経験になると思います。
外国人向けの料理で 海外旅行気分を満喫
不思議な味との出会い 異国飯と出あえるのは、小岩ばかりではありません。 兵庫から北関東にかけての太平洋ベルト工業地帯には、多くの外国人労働者がいて、異国飯屋が増えています。 東京はどこにでもありますが、新大久保から高田馬場、池袋を抜けて大塚にかけて、あるいは上野、錦糸町、小岩などにも多いようです。西葛西もインド系移民が多くいます。 ネパールやベトナムは、場所によらずあります。東京には中国系が多く、大阪には韓国系が多いようです。名古屋を中心とする中部はブラジルが多い印象があります。 前述の小岩の場合、日本人のニーズが低く、空き店舗を居抜きで安価に借りられたため、異国飯屋が増えたようです。外国人移民が増加しており、安価に借りられる店舗があるような場所には、異国飯屋があるはずです。 日本の習慣とは異なる場所だけに、けしからんと思うようなことがあるかもしれません。でも、日本と同じように考えてはいけません。 例えば以前、まったく声を掛けてくれないから注文ができなかったという苦情がありました。日本では店員さんが聞きに来るのが当たり前かもしれません。でも、店側としては、声がかかるのを待っているだけなのです。 また、メニューが読めない、分からないということは、よくあること。それでも、海外旅行のように、なんとなく雰囲気で頼んで、出された料理を食べてみましょう。 初めての店で、ベストの選択をするというのは、日本の店であっても難しいものです。それより、勢いで頼んでみて、変な組み合わせだったねと笑い話にした方が、あとで盛り上がれると思います。想像もできないような味に出あえるワクワク、ドキドキを楽しんでほしいと思っています。 その意味でおもしろいのはフィリピン料理屋かもしれません。料理の味や量ではなく、まったく違った店自体のエンタメ性という軸でおもしろい。奇妙な電飾、いきなりのカラオケ、ケミカルな色合いのケーキなど。こういう様式のはずという固定観念が崩される店ばかりです。 多くの人に、魅力的な異国飯を楽しんでほしいともいます。 =談
やまや・たけし 1976年、東京都生まれ。中国やアジアを専門とするITライター。バックパッカー並みの予算でアジア各国を飛び回る日々を送る。著書に『移民時代の異国飯』『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』などがある。
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Last updated
February 28, 2024 07:58:08 PM
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