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March 2, 2024
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カテゴリ:文化

甲状腺がん――当事者の声を聞く

3・11甲状腺がん子ども基金の調査から

吉田 由布子

 

1都15県に対象を拡大

チェルノブイリ原発事故後、当時18歳以下だった人に甲状腺がんが急増した経験から、福島県で東京電力福島第一原発事故後の201110月から県民健康調査の一環として甲状腺検査を実施しています。

事故当時18年以下の約38年の薬38万人に対し、20歳までは2年に1度、20歳を過ぎると5年に1度、超音波検査が行われてきました。現在は5巡目の検査が行われており、223月までに284人が甲状腺がんまたはその疑いと診断されており、この数は事故前の数十倍に当たるといわれています。また、223月末までに237人に対し手術が実施されています。

311甲状腺がん子ども基金」は、こうした福島原発事故に甲状腺がんと診断された子どもたちとその家族を支援することを目的に20167月に設立された特定非営利活動法人です。国内外からの寄付で療養費給付事業「手のひらサポート」を運営しており、支援対象地域は事故時の放射性ヨウ素拡散地図に基づいた福島県を含む1都15県です。

がんと診断された人々の療養費は、今年の8月から増額し一律15万円、22年9月までに、福島県126人、福島県64人の方に療養費を支援しています。

 

 

患者を傷つける箇条診断の主張

甲状腺がんが多数見つかっている事実に対しては、「将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることのないがんを発見している」という主張もあります。

しかし、福島県内の甲状腺がんの手術を行う福島県立医大の医師は、手術はガイドラインに沿っており、リンパ節転移が7割程度あるなど、他の甲状腺専門病院での臨床例と変わらず、「過剰診断の危惧は無用」と述べています。にもかかわらず、「過剰診断」を理由に、学校で実施する検査の実質的縮小を主張する県民健康調査の検討委員もいます。

また、当基金の問い合わせが契機となり、がんとせん断されながら集計に含まれない人がいることも分かりました。県民健康調査の検査時にはがんと診断したケースでは、検討委員会に報告されず、公表数に含まれていなかったのです。この「集計外」の患者は18年末時点で43人に上っています。

基金では、事故から10年を迎えた昨年、飢饉への申請者167人にアンケートを行い、事故当時の居住地で、福島県70人、県外35人、計105人の方から回答を得ました。

申請者の手術の状況を福島県で比較すると、大規模な検査が行われている福島では早期発見ができているものの、県外ではがんが進行した段階で見つかる人が多く、甲状腺の全摘出や遠隔移転の割合は、福島県内と県外では大きな差が出ています。

 アンケートの中で、検討委員会で学校での甲状腺検査について縮小したほうがよいという意見が出ていることについて聞いた質問では、本人、保護者ともに「継続」を希望する人が80%を超え、「拡大」を含めると、ほぼ90%から100%となりました。

その理由の多くは「早期発見ができるから」というものです。生死や思春期、若年聖人といった若い年齢でがんと診断されたことのショックは想像に難くありません。それでも彼らは学校での検査が早期発見につながっていると認識し、学校検査の意義を認め、継続すべきと捉えているのです。

「過剰診断」という主張があることについても自由記述で意見を求めました。

「自分が甲状腺がんになったとして、このようなこと言われたらどう思いますか」「ひとごとのように思っているからだと思う」「『死なない=過剰』と言われるのは心外」「責任逃れの感が否めない」といった強い反発や批判とともに、「手術を受けると選択したことが間違いだったのかもしれないという心理的負担を強く感じる」と不安を呼び起こされる人もいました。

「過剰診断」という主張が、若い甲状腺がんの当事者やその家族にどれほどのストレスを与えているのか。彼田の思いを真摯に埋め止める姿勢が必要です。

 

前を向き生きられる中に復興が

検査は縮小ではなく継続を

 

彼らの苦悩理解し支援へ

また、患者の症状は一様ではないし、年齢によって抱える問題も多様です。現在の健康状態は良好や普通との回答は9割を超すものの、心配事の有無を尋ねると、日々の体調不良や疲れやすさ、再発・転移や妊娠・出産への不安など、さまざまな不安を抱えていることが分かりました。彼らは甲状腺がんについてもっと知ってほしいと願っています。同時に自分たちを支えてくれる周囲の人への感謝の気持ちを率直に述べています。

アンケート調査の協力者である山口大学の高橋柾仁教授は「甲状腺がん患者やその家族の声をていねいに耳を傾け、そうした人々が少しでも苦悩から立ち直り、前向きに人生を送れるようにしていくことこそ、本当の意味での『復興』の道であろう」と語っています。

基金では今後も当事者の声を聞きながら支援と続けていきますが、原発事故を起こした東電や国、福島県は若い患者の苦悩を理解し、きめ細かい支援を行う必要があるのではないでしょうか。

(「3・11甲状腺がん子ども基金」事務局長)

 

よしだ・ゆうこ 熊本県生まれ。1990年からNGO「チェルノブイリ被害調査・教授」女性ネットワークで活動。2016年、「3・11甲状腺がん子ども基金」発足から理事を務め、現在、事務局長。著書に『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの――「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』(共著)などがある。

 

 

 

【社会・文化】聖教新聞2022.11.8






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Last updated  March 2, 2024 07:00:51 AM
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