4737272 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

浅きを去って深きに就く

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

March 4, 2024
XML
カテゴリ:コラム

生きとし生けるもの

作家  一色 さゆり

三年前、庭にクチナシを植えた。

もとは鉢で育てていた苗を、思い切って地植えしたのだ。それ以来、手塩にかけて育てている。

初夏になると、純白の花が甘い香りをただよわせる。「喜びを運ぶ」という花言葉らしい。

わが家のクチナシは孝行者で、初秋にも咲く。しかも一ヶ月以上、つねに三、四輪は開花する。

季節の巡りを告げてくれる、大切な存在だ。

ただし「手塩にかけて」と言ったように、クチナシの世話において悩みは多い。

あぁ、また食べられている――。

何度、そう憤ったか知れない。暑い時期に放置しておくと、新芽が丸坊主になっている。

対応は以下だ。

まずは。葉に点々とついた、約一ミリの丸い黄緑の卵に、目を凝らすこと。指でとって、プチッと潰す。

でもいくつかの卵は必ず見逃される。小さな幼虫が生まれて、すごいスピードで葉を食べる。数日で三センチほどに成長するので、殺虫剤で対応するしかない。

観察すると、同じ虫が葉を食べていた。

身体を縦にして飛ぶ、羽根の透明な蛾だ。『羊たちの沈黙』に登場する蛾に似ている。同じスズメガ科で、オオスカシバというらしいが、私はひそかに「レクター博士」と呼んでいる。

美術作品では、虫に食われた葉も、また自然がつくりだした造形であるとして尊ばれる。

たとえば、伊東若冲の動植綵絵に描写された葉の多くは、穴があいたり枯れたりしている。

茶室の設えでも、完璧な茶花だけでなく、ありのままの姿が好まれているのを何度か見かけた。絵本は『はらぺこあおむし』もほほ笑ましい。

生きとし生けるものはみな平等――。

そう分かりつつ、手塩にかけて育てているクチナシにつく虫は、やはり私にとっては天敵だ。

 

 

 

【言葉の遠近法7】公明新聞2022.11.9






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  March 4, 2024 04:39:19 PM
コメント(0) | コメントを書く
[コラム] カテゴリの最新記事


Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

エキソエレクトロン@ Re:宝剣の如き人格(12/28) ルパン三世のマモーの正体。それはプロテ…
匿名希望@ Re:大聖人の誓願成就(01/24) 著作権において、許可なく掲載を行ってい…
匿名です@ Re:承久の乱と北條義時(05/17) お世話になります。いつもいろいろな投稿…
富樫正明@ Re:中興入道一族(08/23) 御書新版を日々拝読しております。 新規収…
ラディッシュ@ Re:北条弥源太(08/22) こんにちは!初めてこちらに参りました。 …

Headline News


© Rakuten Group, Inc.