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カテゴリ:文化
紅葉いろいろ 俳人 小島 健 おや、きれいな歌声が聞こえますよ。輪唱かな? ♪秋の夕日に 照る山紅葉~♪ (高野辰之作詞「紅葉」)。 紅葉は俳句では秋の季語(季節の言葉)になっています。でも、十一月頃が見ごろのところも多いのではないでしょうか。冬紅葉。散紅葉という季語もあります。うーん、この鮮やかな紅葉は、なんとも日本人の詩心を誘うではありませんか。 紅葉(もみじ、こうよう)には、楓、櫨、漆、柿、桜、雑木等があります。 黄葉にはご注意!(もみじ、こうよう)と読みます。つまり、紅葉でも黄葉でも(もみじ、こうよう)と、同じ発音です。黄葉は銀杏をはじめ、柏、楢、櫟、萩、柳、ポプラなど。 では、前出の紅葉の歌詞も思い出しながらGo。 夕紅葉は詩情が濃く、風趣に富みます。
日本人の詩心誘う鮮やかさ
夕紅葉とみに水音澄みわたり 鈴木花蓑
この木登らば鬼女となるべし夕紅葉 三橋鷹女
後句、鮮烈なイメージ。でも、あな、恐ろし。 照紅葉は日を受け、美しく照り輝く紅葉です。
かがやける白雲ありて照紅葉 高浜虚子
視点がユニークですね。「かがやける」と、「照」の対象が異なり、白雲と紅葉が輝きあっています。
白樺に火巻きのぼる蔦紅葉 岡田日郎
寂しいと言い私を蔦にせよ 神野紗希
蔦の紅葉の美しさは格別です。俳句で単に蔦と言えば蔦紅葉を指します。 前句は白と赤の色彩感が見事で、蔦紅葉を火と捉えた比喩に拍手! 後句は詠法も大胆な若い女性の俳人です。美しい蔦に巻かれるなら、それもよし? どなたですか、急に「寂しい」などと言った人は?
銀杏ちる兄が駈ければ妹も 安住 敦
銀杏散るまつたゞ中に法科あり 山口青邨
原色の銀杏黄葉はチャンピオンです。銀杏黄葉は神社やお寺の境内。公園、街路にと賑やか。本の栞用に銀暗落ち葉でも探し、のんびりしましょう。 前句は兄妹の仲良し光景、「お兄ちゃん待って!」。心が温まりますね。後句は大学のキャンパス。法科の学生も風雅を大切にし、柔軟な思考をしましょう。
黄葉見や用意かしこき傘二本 蕪 村
古来、黄葉は詩歌の主要題材、紅葉狩、紅葉見で紅葉を鑑賞します。林檎狩や葡萄狩等とは異なり、紅葉の枝を折って持ち帰るのはNGです。 右句は「傘日本」が意味深長? 蕪村さんて、なかなか隅におけないなあ。
紅葉酒九鬼水軍の裔と酌む 岸本砂郷
盃を止めよ紅葉の散ることよ 高野素十
当然、紅葉狩には花見酒ならぬ紅葉酒が付きものってわけでして……。 「林間に酒を燗めて黄葉を焼く」(白楽天の詩の一節)。林の中で紅葉を焼いて酒の燗をして飲む。まあ、何と野趣に富むことでしょう。ああ、もうたまりませんね!
伏す鹿の耳怠らず紅葉山 小島 健 (こじま・けん)
【文化】公明新聞2022.11.11 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 5, 2024 06:34:08 AM
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