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2006年10月13日
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「夏の庭 -The Friends--」湯本香樹実著(新潮文庫 平成6年2月25日発行 平成13年5月30日二十刷改版)

夏の庭20刷改版

六月に入ってから、雨ばかり降っている。
でぶの山下が学校を休んで今日で三日目。日曜日の塾のテストも休んだから四日も会っていない。
「おばあさんのお葬式で休んでいるんだって」
メガネの河辺が言った。

翌朝、学校の正門で山下を見つけた僕が
「よお、でぶ!おまえのおばあさん、死んだんだって!」
と言うと、一瞬おどおどするような表情を見せたが
「うん、そう、そうなんだ!」
と大きな声で元気良く答えた。
僕には山下の気持ちが分からない。死んだのは山下、おまえのおばあさんなんだぜ!
だけど僕はお葬式に出たことがない。だれかが死んだらどんな気持ちになるかなんて全然知らないんだ。

塾が終わってバスを待つ間
「お葬式、どんなだった」
と河辺が聞いた。
「おもしろくなんかないよ・・・だけど、人は死ぬと焼かれるんだ・・・一時間後には骨になるんだ・・・すごくちょっぴりしかなかったよ・・・大きな煙突から煙がほんの少しでてた。その骨を、みんなでお箸でつまんで、骨壷に入れるんだ」「それでおしまい」
赤ちゃんと時に会ったきりのおばあさんだったから悲しくなかったそうだ。
「それより死んだ人、見たことあるか」
僕と河辺は見たことが無い。
「お棺の中に花を投げ入れる時、耳と鼻の穴に綿みたいなものがつまっているのが見えたよ。おばあさんの顔に散った花びらをはらってあげようとしたけど怖くて手が出なかった。誰かがお棺にふたを閉めてしまった。石で釘を打つ。こつん、こつん・・・その夜うちにあるぬいぐるみとプロレスしている夢を見たんだけどはっと気が付くとおばあさんの死体なんだ。・・・反応が全然無い。モノなんだ。物体。それがものすごくこわかった」
「死んだらどうなるんだろ」と僕が聞くと、
「お化けはいる。ふわふわした軽いものみたいに思っていたけど・・・きっと重いんだよ、ものすごく。砂を詰めた袋みたいに重い」

それからしばらくしたある日、河辺が重要な話があると僕と山下を呼び出した。
「書道教室の隣の隣に一人暮らしのおじいさんがいる・・・あそこのおじいさんもうじき死ぬんじゃないかって・・・」
「オレたちはおじいさんを見張るんだ」

僕たちの見張りが始まった。おじいさんが死ぬところを見るために・・・

中学受験をするため河辺や山下と一緒に塾に通っている六年生の僕・木山、お母さんと二人暮しでエキセントリックな河辺、家が魚屋の山下、最近夕飯を食べずにワインばかり飲んでいる僕のお母さん、嫌味な杉田と松下、男子の憧れ田島と酒井、池田種店のおばあさん、そして始めは生きる屍のようだったおじいさん。

始めは顔も区別が付かなかったおじいさんを見張り、尾行を続けるうち、刺身を差し入れしたり、ゴミを片付けたり、洗濯物を干したり、草むしりをしたり・・・おじいさんと過ごす夏。そして・・・


子どもが借りてきた本を読んでみました。
もうすっかり秋なのに何故か夏に読みたい本が続いております。

今にも死にそうなおじいさんが木山・河辺・山下の三人に見張られ尾行されるにしたがって元気になって、ついには尾行を煙に巻いたり、ビックリさせたり、杉田と松下の登場で追い詰められた?木山たちを助けてくれたり・・・
このおじいさん、意外とお茶目なんですよね。
普段、お年寄りが身近にいない子どもにとって、また親族から離れて一人暮らすお年寄りにとって、動機は「死んだ人が見たい」であっても、この出会いは幸運なものであったなあと思いました。

三人はおじいさんから生活の知恵を受け継ぎ、奥さんだった人や戦争の話を聞き、そして知りたくてたまらなかった身近な者の死について身をもって教えられることになるのですがこうしたおじいさんとの関わりが夏休みの間にそしておじいさんが亡くなってからも彼らの身体や心を大きく成長させました。

おじいさんの分かれた奥さんを探したり代役を頼んだりは子どもならではの大胆さです。大人なら考えすぎて出来ません。さすがに代役を種屋のおばあさんに頼んだことはおじいさんに叱られましたが、三人に遺言を託すきっかけとなったのでしょう。

夏休みの締めくくりでもあるサッカー合宿はあれだけおじいさんを見張り続けたのが短期間とは言え、途絶えてしまうのでおじいさんとのお別れを予感させました。
おじいさんが四人で食べようと用意していたブドウが寂しいですね。

おじいさんとの関わりが薄かったおじいさんの甥たちにとっては身勝手な叔父さんでしかなかったのですが、おじいさんも戦争であれほど悲しい思いをしていなかったら多分木山たち三人にとってのおじいさんと同様良い叔父だったかもしれません。

おじいさんの死を悲しみ、お葬式で送り出した三人。

木山は母が病気で入院することで反ってギクシャクしていた父母の中が修復され春から私立中学に、河辺は母の再婚を受け入れチェコに、山下は受験に落ちたけどこれで将来父の後を継ぎ魚屋になれると前向きです。
おじいさんなら何て言っただろう、どうしただろうとその時々に、考える三人。おじいさんの残したものは大きかったのですね。

随分器用なおじいさんでしたが、花火職人もやったことがあるのには驚きました。
一見怖そうなおじさんとも出会うきっかけとなった花火。
おじいさんの別な一面も見えて三人には新鮮だったようですね。
色々な人(特に大人)と交流があることは子どもにとっては大切なのかもしれません。
ただ、色々な職を転々としているところがおじいさんが戦争で受けた傷のようにも思えて少し複雑な気分でもありましたが・・・

最後にサッカー合宿でのコーチのおばあさん。この怪談好きなおばあさんのお茶目なことと言ったら・・・もう最高です!





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最終更新日  2006年10月13日 12時16分42秒
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