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ALICE
aka NECO Z ALENKY Jan Svankmajer 84min(1:1.33) (桜坂劇場 ホールCにて) (つづき) この映画を撮るとき、もちろん監督は、全体や細部に関して、大方ないし綿密な構想を持っていただろう。アリスを演じたクリスティーナにとって、純実写映画の撮影と勝手が違ったとすれば、それは撮影時に相手が動かないことだ。彼女に石を投げつける者がいても、あくまでストップモーション・アニメーションとしてコマ撮りされるのだから。 しかしそれで、クリスティーナは撮影の過程で主人公アリスを生きたはずだ。そしてそれは(前回書いたように)アリス・リデルに物語る中で、聴き手であるこの10歳の少女の心理を、キャロルは深く登場人物アリスに反映させた。それが主人公アリスであり、それをやはり同年代の子役クリスティーナが演じるのだ。そこにこの映画の面白さの一つがある。色々なことに遭遇してのアリス/クリスティーナの反応や表情は、脚本に書かれ、監督に指示されたものであると同時に、少女クリスティーナの生の反応でもある。オールアニメではこの要素がないことになる。 冒頭は実写で、小川の岸に座ったアリスが、スカートの上にのせた拾い集めた小石を川に投げている。年長の姉が膝に本をのせてアリスの隣にいる。スカートの上の小石をすべて川に放ってしまうと、アリスは姉の本の頁をパタパタパタパタ…といたずらして、その手を姉に叩かれてしまう。場面は変わって雑然としたアリスの部屋。さっきの小川での姉とアリスと同じように二人の人形が並んで置かれている。そこには紅茶の入ったカップが置かれていて、人形アリスではなくクリスティーナ演じるアリスが小石をそのカップに投げ込んでいる。石をカップに投げているのは人間アリスであって、本を膝にのせた姉人形の隣に座るアリス人形ではないが、冒頭の現実のシーンが、姉&アリス人形として、アリスの部屋の中に再現されるわけだ。客観的視点が、アリスの主観の視点に移行するサインとも受け取れる。 そして室内で突然の物音。剥製だったとおぼしき白兎が動き出していて、身支度を整えると慌てたように外に出ていった。アリスが後を追うと、白兎は荒涼とした平原に置かれた小さなテーブルの引き出しの中に消えた。アリスも白兎の真似をして手を打ってみるが、引き出しは開かない。丸い木製のノブを引っ張るとノブは外れてしまう。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.03.21 00:35:29
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