カテゴリ:本
"嘘"をテーマにしたアンソロジー。
優しい嘘、可愛らしい嘘、切ない嘘、いろいろな思いが折り重なった一冊。 おはよう・西加奈子 出会った日から家に入りびたりになった朝子。 一緒に住んでいても「お帰り」も言わず、ほとんど実家にも帰らず、連絡もしなかった朝子。 「フィンガーボールとお姫様とこじき」(こじきがフィンガーボールの水を間違って飲んだとき、恥をかかせぬようお姫様もそれに倣った話)を嫌い、「間違っていた時はすぐ言って」と言った朝子。 息詰まったりすることもあったが、彼女にプロポーズした時、彼女の抱えていた苦悩を知る。 この世のすべての不幸から・豊島ミホ 整形した母が産んだ妹は醜女だった。 出奔した母に代わり、鏡や姿が映るものすべてを排除した座敷牢に閉じ込めた妹・真希の世話をすることになったのは母方の祖母と父と兄・惣。 真希に「可愛い」といい続けた惣。大学進学のため、妹との別れの日が近づいていた。 フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン・竹内真 懇意にしている老人から月の土地をもらったという少年・ソラくんと出会った転校生のシズカ。 転校ですぐ別れるも、折節に触れてソラと再会する。 木漏れ陽色の酒・光原百合 寿命でない限り、病を直す事ができるが、それを飲むと一番大切な人(存在)を忘れてしまうという果実・"マノミ(魔の実)"を育てる初音。 彼女のもとを訪れた夫婦。病を持った妻が無くす記憶とは― ダイヤモンドリリー・佐藤真由美 母の親友・美帆子さんの彼が彼女と別れようとしているのを知りながらも、彼女に彼は「ダイヤモンドをプレゼントしてくれると言っていた」と嘘を付いてしまった少年の話。 あの空の向こうに・三崎亜記 戦争後、大国に占領され、傀儡政権の指導者「偉大なるk」による独裁により、戦争はなかった事になっていた。 そのため、爆弾の後遺症で次々に死にゆく生徒たちは「転校した」「海外旅行に行った」と告げねばならず、 爆弾の後遺症がある自分に変わらずプロポーズをしてくれる彼に分かりきった嘘で断る私。 いつか、この世界に救いがくる事を、希望を胸に抱いていた。 だが、現実は― 二重三重の嘘、独特の世界観が抜きん出ている。 やさしい本音・中島たい子 美容室で思い通りの髪にならなくてもやり過ごし、浮気した疑いのある彼へのうっぷん晴らしに 自分ではないキャラクターで百貨店を冷やかした私。 要領が悪い彼と本音を隠すのが上手な私。 すれちがいながらも再びやり直そうと思う。 象の回廊・中上紀 世界を放浪するように旅する中で出会った美咲とTとケイ。 お互い美術を志していた美咲とケイはそれからも連絡を取り合う。 Tにそれぞれほのかに思いを寄せていた二人だった。 きっとね。・井上荒野 母親の看病の為故郷に帰った誠一。 彼の居ぬ間に店にきた客・トオルと浮気する勝夫。 やさしいうそ・華恵 母親の友人・京子に英語を習う出(いずる)。 綺麗に着飾り、成功者のように振舞う京子だったのだが― お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 9, 2006 10:00:44 PM
[本] カテゴリの最新記事
|
|