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June 16, 2011
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カテゴリ:映画・テレビ・本


どうして、徒刑囚だったバルジャンが、市長になれたのか。

たまたま彼がこの町に来た時に、市役所に火事が起こり
火の中に残された憲兵隊長の子どもを命がけで救ったので
憲兵達は彼にパスポートの提示を求めなかったから。

そうして、移り住んだ町で黒玉ガラスの製造で当て、
工場を大きくし、多くの人を雇用し、私財を投げ打って
病院と学校を作った。

~木版挿絵で読む名作の背景~

コゼットという愛する対象を得たものの、
流転の日々で心安らかに暮せなくなることを思えば、
ここでの数年、栄光の階段を猛スピードで駆けのぼっていく
バルジャンは運命の女神様のいたづらに翻弄されたかのよう。

司教が「あなた」と呼んでくれて、人として扱ってくれたこと
その驚きと喜びが、バルジャンに正しく生きることを導いてくれた。

持てる物の少なさを嘆いて、世をすねていた人間が与えることの
喜びに目覚めるきっかけになった一言の大きさ。



執拗にジャン・バルジャンをつけ狙い、
最後に命を助けられても、自殺を選ぶ彼。

改心したバルジャンなのだから
見逃してやってほしいと思うけれど
非情に思えるジャベールも、また、
混沌とした時代に弄ばれた気の毒な人で、
本来ならば手を差し伸べてやりたいくらいの人だった。

ジャベールはエリートとして、
バルジャンを見下していたわけではなかった。

刑務所の中でトランプ占いの女から生まれたジャベールの
父もまた徒刑囚だった。

徒刑場の看守になった彼は苦労の末、警部まで上り詰めたのだ。

だからこそ、義務に忠実だったけれど、
追っていたバルジャンに命を助けられた時、
義務と秩序を冒したジャベールは自分を赦せなかった。

セーヌに身を投げてしまったジャベール。
最後には「おまえ」でなく「あなた」とバルジャンを呼んだジャベール。

新しい演出の「レ・ミゼラブル」で、ジャベールに会うのが楽しみだ。

(「レ・ミゼラブル」百六景 ~木版挿絵で読む名作の背景~ おわり)





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最終更新日  January 13, 2016 12:07:55 AM
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