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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2013.01.15
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カテゴリ:政治・行政
日本経済新聞14日付け1面に「贈与非課税、孫も対象、政府・与党方針、2500万円まで、資産移転促す」という記事が載った。

 <政府・与党は孫への財産の贈与について、2500万円までを非課税にする制度の対象にする方針を固めた。これまでは子への贈与が対象だったが、孫まで広げて若年層へ資産移転を促す。制度を利用できる贈与側の人の年齢も従来の65歳以上から60歳以上に下げる。高齢者が持つ「眠れる資産」を有効に活用できる仕組みを整え、日本経済の再生につなげる>

 実際にはすでに、高齢者による子や孫への経済支援は広がっている。開発途上国や高度成長期の日本に典型的なように、通常は現役世代が稼ぎ、その収入で子どもや老親の生活を支える。ところが、日本大学の小川直宏教授の調査(日経2012年11月9日付け経済教室)によると、低成長の1990年に入ってこの構造は劇的に変わった。

 1984年には、家族が稼いだ収入から自分で消費した分を差し引いたネットフロー(主に貯蓄などの金融資産)のうち、7割を20歳未満の年少者が受け取り、3割を65歳以上の高齢者が受け取っていた。

 ところが、2009年にはネットフローのほぼすべてを年少者が受け取り、高齢者の受取額はマイナス2%となった。つまり、今は高齢者が年少者や働き盛りの年齢層(20―64歳)に金銭面で支援しているのだ。

 小川教授によると、こうした高齢者による子供・孫世代への経済支援が顕著になったのはバブル経済崩壊後の94年以降で、今も続いている。

 親、祖父母からの援助を受けなくなる若者の平均年齢は84年には27歳だったが、99年以降は30歳に上昇した。一方、高齢者で子や孫の援助を受けるようになる年齢は、84年には64歳だったが、2004年に77歳、09年に80歳と25年間で16歳も上昇した。

 フリーターなど非正規労働者の若者が増え、経済的な親離れが遅れている一方、高齢者は安定した年金収入に加え、貯金や不動産など資産形成が充実、経済的に子供の世話になる必要が大幅に減っているのである。

 もはや高齢者を被保護者とする見方は実体を表していない。だが、投票者は高齢者が多いので、年金を減らしたり、彼らの資産課税を強化したりする税制改正は政治的に難しい。

 とは言え、消費や住宅投資が旺盛なのは若い世代であり、彼らが消費することで経済は活性化する。そこで、公的な年金削減や資産課税強化で若い世代の取り分を増やすのではなく、高齢者の満足する形で実質的に高齢者の資産や年金収入の若者への移転を促進し、消費拡大を図った方がいい。

 こう考えたのが、今回の贈与非課税枠の拡大だろう。

 高齢者の安定した年金収入や資産形成には手をつけず、非正規雇用などで不安定な若い世代に対し、高齢者が政府に代わってセーフティーネット(安全網)の役割を果たす。「子供や孫を支援する」という、高齢者の生きがいを感じさせる形で。

 まあ、年寄りの心理を読み込んだ心憎く、渋い政策だとは思う。財務省の役人が考えそうな細かさで。だが、若者を元気にしたいなら、もっと彼らが誇りと生きがいを感じる形で、収入の道を広げる工夫も拡充した方がいいと思う。

 中高年者が勤める企業の雇用を安定させる税制や規制を温存するのではなく、規制緩和でより競争的な環境を整備し、ベンチャー企業が育つ余地を広げるといった形で。





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Last updated  2013.01.15 17:27:13
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