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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2013.09.15
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カテゴリ:原発
 安倍晋三首相は7日の東京五輪招致演説で「東京電力福島第一原発の放射能汚染水漏れはコントロールされている」と発言した。これに対し、東電幹部が「コントロールされていない」と述べたことが、13日のテレビニュースや14日の新聞で報道された。

 この点については、安倍首相追い落としを「社是」としている朝日新聞にしては珍しく、各紙の中で最も客観的でわかりやすく、バランスのとれた事実報道をしている。 

 <東電の山下和彦フェロー(技術顧問)は13日午前、福島県郡山市で開かれた民主党の会議で、同党議員から見解を求められて発言した。「今の状態はコントロールできていないと考えている」と述べた。……「予想されるリスクはコントロールされているが、想定を超えてしまうことが起きている」とも語った>(14日付け朝刊、以下同じ)
 
これに対し、菅義偉官房長官が同日午後の記者会見で行った発言については、こう書いている。

 <「放射性物質の影響は発電所の港湾内にとどまっている。汚染水の影響が外洋に及ばないようにしていくということで、首相は『コントロールされている』と発言した」と強調。東電側の説明には「貯水タンクからの汚染水漏洩(ろうえい)など、個々の事象は発生しているという認識だ」と述べ、全体状況についての見解ではないと説明に追われた>

 これを受けて、東電が行った補足説明も納得の行く形で報道している。
 
 <東電も13日夕、原子力・立地本部の尾野昌之・本部長代理が会見で、山下氏の発言について「首相は汚染は港湾内にとどまり、近海の海水の濃度の上昇は認められていないという趣旨で発言している。首相の認識と同じだ」と足並みをそろえた。東電によると、山下氏の発言はタンクからの汚染水漏れなどを「コントロールできていない」と発言したものだとしている>

 これで、ほぼ問題は解決したと思われるが、言葉尻をとらえることで安倍政権を揺るがしたいと考える民主党が「チャンス!」と考えるのは当然だろう。

 <(同党の)大畠章宏幹事長は13日、記者団に「首相の責任問題だ。明確な説明を求めたい」と指摘。今後の国会審議で追及する考えを示した>

 だが、私に言わせれば、これは安倍政権にとっても、それ以上に国民にとってもチャンスである。政府は「近海の海水の放射線物質の濃度は上昇していない」ということを、データで具体的に示し「だからきわめて安全性が高い」と強調してもらいたい。

 むろん、汚染水漏れが治まっていないのも確かだから、今後安全性が脅かされる懸念は完全には払拭されていない。だから、すでに五輪誘致演説で約束したように、安倍首相は「政府が前面に立って汚染水漏れを解決すると改めて宣言してもらいたい。

 リーダーが先頭に立つことで、腰が引けていた経産省や財務省、環境省も前向きに行動を起こす。原発事故の解決を促され、原発再稼動を早期に実施するテコとなる。

 国会論議を通じて、東電にすべての責任を押し付けた民主党政権時代の無責任な原発政策も一層、明らかにされる。むろん安倍政権も責任から逃れられない状況に追い込まれるが、それは安倍政権にとっても、国民にとっても望ましいことである。

 福島原発の汚染水で健康への影響を心配する必要がないことは、環境ジャーナリストの石井孝明氏のブログで確認できる。データに基づいた説得力のある指摘で、国会でもこうした客観データを基にした科学的な議論を展開してもらいたい。





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Last updated  2013.09.15 12:33:57
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