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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2014.05.20
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カテゴリ:外交・軍事

 本日(20日)の日本経済新聞のコラム「大機小機」(エンジェルの大誤算)は、キナ臭さが増す今日の東アジアやウクライナの情勢を考えるうえで興味深かった。

 サラエボの銃声が第1次世界大戦の引き金になったことは良く知られている。1914年6月28日、サラエボでオーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者フェルディナント大公夫妻が、セルビア民族主義者に暗殺された事件だ。

 当時の各国の元首は戦争を望んでいなかった。なのに「戦争のスケジュールは彼らを容赦なく力ずくで前方(開戦)へ引きずっていった」。

 第1次世界大戦を題材にしたノンフィクション「八月の砲声」(バーバラ・タックマン著)の文章を引用して、同コラムの著者(毛毬:ペンネーム)はこう書いている。

 <ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世も戦争を望まなかったが、将軍たちが事前に練り上げていた綿密な戦争計画が自動的に回転して、百年前の夏、欧州は戦火に包まれた>
 
 <開戦の数年前、英国のジャーナリスト、ノーマン・エンジェルが出版した「大いなる幻想」は、世界的なベストセラーになった。電信、電話の実用化や鉄道網、汽船の定期航路の発達で、世界が狭くなり、国境を越えた商品、資本、人の行き来が増えていた。経済の相互依存が、こうも深まれば、領土拡張が国を富ませるという旧来の考えは、今や幻想、と彼は説いた。
 得意先になった近隣国を打ち負かせば、戦勝国も痛手を受けるので、欧州の地で戦争は、もはや不可能になった、という楽観論は大いに受けた>

 だが、戦争は不可能ではなかった。第1次大戦は起こってしまった。「エンジェルの大誤算」である。

 グローバル経済は100年前より現在の方が一層広がり、深まっている。たとえば、ベトナムと中国の貿易は近年、拡大の一途をたどり、連携は複雑かつ重層的だ。20日付けの日経でハノイ駐在の伊藤学記者はこう伝えている。

 <韓国サムスン電子はベトナム北部で同社最大級の携帯電話・スマートフォン生産工場2カ所を稼働している。両工場の生産台数は年間約3億台とみられ、同社のスマホ全体の5割をベトナムで生産する計画だ。
 両工場は中国南部と分業体制をとる。広東省東莞市にあるサムスン関連の液晶工場で液晶ディスプレーのモジュール回路を生産し、トラックでベトナムまで陸送している。この中越間の部品供給が滞れば、生産に影響が及ぶのは必至だ>
 
 <(日本の)ブラザー工業はベトナムにある3つの工場でレーザープリンターやミシンを生産している。……部品の一部は中国から輸入し、ベトナムの中国系企業からも購入している>

 経済とそれに基づく人々の生活と安定を考えれば、ベトナムと中国の対立は百害あって一利なしである。

 だが、両国の領有権をめぐる紛争、中国が強引に進める石油掘削活動がベトナムでの反中デモを引き起こした。デモによる騒乱で中国人に死傷者が出たことなどから、中国企業が4000人に上る従業員引き上げるなど、両国のみならず、日本や韓国を巻き込んだ国際交際分業に支障が出て、拡大してきた貿易も冷え込み始めた。

 なんとバカげたことを、と思うだろう。非の大半は帝国主義的に強引に他国の領地(領海)を侵す中国にある。日本やベトナム、フィリピンといたずらに領有権の紛争を起こすことよりも、共存共栄の精神でお互い協力した方が中国にとっても何百倍も良いはずだ。

 それを中国の政治家の一部は理解している。だが、軍事力の拡大で自分の実力を過信し「アメリカ何するものぞ」と頭に血が上った人民解放軍の幹部とそれにつながる政治家は、版図の拡大に向けた壮大な計画を抑えきれなくなっているように見える。「版図拡大のスケジュールが彼らを容赦なく力ずくで前方へ引きずっていっている」とも言えよう。

 「大機小機」の毛毬氏はコラムをこう結んでいる。
 
 <グローバル化は戦争をなくすのだろうか。ウクライナで、南シナ海で、尖閣が浮かぶ東シナ海で「途方もなくバカげたこと」が起きないと言い切れるだろうか。
 安倍晋三首相が「集団的自衛権」で一歩踏み込んだ。「集団的自衛権はあるが、行使できない」という従来の内閣法制局の憲法解釈には、首をかしげたくなるが、代わる歯止めをどうするのか、冷静に、入念に議論を重ねてほしい>

 最後のくだりには異論がある。毛毬氏は「日本の集団的自衛権の行使が歯止めなき軍拡につながり、かつてのようにアジア諸国との危険な戦争を引き起こさすことにならないか」と言いたげだ。

 その危険がないとはいえない。だから、国会内外で冷静、入念な議論は必要だろう。だが、現局面で一番心配しなければならないのは中国や北朝鮮の軍拡なのである。

 日本は今、徹底的に受身、防衛的な立場にある。集団的自衛権行使を容認する憲法解釈に舵を切るのは、そうしないと中国や北朝鮮に対峙できないからだ。

 軍事予算の削減を進める米オバマ政権は「アジア重視」戦略という言葉とは裏腹に、イザという時、積極的な軍事行動をとらない不安が出ている。

 「日本は米国とともに軍事行動し、米軍が危ないときは自衛隊が軍事的に助けることに躊躇しない。だから尖閣諸島で中国とコトを構えることになったら、自衛隊は先頭に立つが、米国も日本を全面支援してほしい」

 こう伝えることで、米軍を日本に引き付ける必要がある。現在の局面はそういう状況だ。中国の危険な行動を阻止するための集団的自衛権の行使であり、それを内外に表明することが、中国軍の危険な行動を抑止する歯止めになるのである。

 毛毬氏には、この視点が希薄であり、厳しく言えばピントがずれている。





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Last updated  2014.05.20 17:09:09
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