『金魚』 著者:北原白秋
北原白秋と言えば、明治から大正時代にかけて活躍した詩人・歌人・童謡作家であり、流れるような旋律と抒情的な作風をイメージしてしまう。ところが童謡集「トンボの眼玉」に『金魚』という恐ろしい詩の一節を発見してしまった。 当時「こんな残虐な詩を、子どもに読ませるのはけしからん」という抗議文が届いたところ、白秋は次のように答えている。「児童の残虐そのものを認めているわけではない。ただその残虐は子どもの成長力のひとつをあらわすものであり、それ自体が美であり、詩である。これを悪とみるのは大人の不純な道徳観念だ・・・。」 また詩の中で児童が金魚を殺したのは、それほど母に対する愛情が深かったからなのだ。突然母親がいなくなり、子どもは悲しみの余り、つい思わず金魚を殺してしまった。そして知らぬ間に数匹の金魚を殺してしまうのだが、金魚の光る眼をみて自分の犯した恐ろしさを悟るのである。まさに子どもの真摯な気持ちを、白秋は子どもの心の中に潜り込んで表現したのであろう。『金魚』 母さん、母さん、どこへ行た。紅い金魚と遊びませう。 母さん、歸らぬ、さびしいな。金魚を一匹突き殺す。 まだまだ、歸らぬ、くやしいな。金魚をニ匹締め殺す。 なぜなぜ、歸らぬ、ひもじいな。金魚を三匹捩ぢ殺す。 涙がこぼれる、日は暮れる。紅い金魚も死ぬ死ぬ。 母さん怖いよ、眼が光る。ピカピカ、金魚の眼が光る。編集:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村