|
カテゴリ:高論歩事件帳
河原焼き、の回覧板が回ってきたのは、それから、半月後のまだ春浅い日だった。上流の橋から、堤防のある下流まで、ちょうど、リバリーヒルズの南側にあたる河原一面を野焼きするのだと言う。 「野焼き?たしか、ダイオキシンとかで、禁止されてるんじゃなかったか?」 高論歩刑事の疑問符に丸田万吉巡査は得意げに説明をした。 「そうなんですけどね、つい、二週間前、新聞にも出たでしょう、上流の昭島の方で、ホームレスの焚火で河原が火事になって随分と焼けて、住民が避難する騒ぎになったことがあったでしょう。それで、須崎自治会長が警察、河川管理者、消防署、を駆けずり廻り、火災予防、環境整備、河川清掃等の名目をつけて、今回特別の河原焼きの許可を得たんですよ。河原には、枯草や、枯れ枝、漂着物、ホームレスが持ち込んだ塵も溜まってますからね」 チッチッチッ高論歩刑事の舌が鳴った。 「焼かれちまえば、ホームレスも自動的に何処かへ、流れていくしかないだろうな。須崎会長、あくどい手をつかいやがるなあ」 3月23日、日曜日、快晴、やや南風。 野焼きは河原焼きまつりに発展し、土手には自治会の屋台まで出ていた。消防署、消防車、警察、河川管理者も来て、土手の上には住民市民が、まるで、花火でも見るかのように集まってきていた。市長の挨拶のあと、須崎自治会長の 「平和な町、安全な町、清潔な町のため、塵掃除スタート!」の号令で、堤防の端から火が放たれ、火は勢いよく、川風に煽られて、上流に向かって、まるで、生き物のように、のたくりながら、燃え移っていった。 (次回最終回につづく) 作:朽木一空 ※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。 またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.06.13 11:07:25
コメント(0) | コメントを書く
[高論歩事件帳] カテゴリの最新記事
|