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カテゴリ:昭和歌謡ラプソディー
懐かしき昭和時代に大ヒットした歌謡曲にまつわるお話を、ショートショート風に綴ってみました。まず一番バッターは、ご存じ三田明のデビュー曲であります。 僕の名前は二田明と言います。多分年配の方なら、どこかで聞いたような名前でしょう。まあそんなことはどうでも良いのですが、ちょっとだけ僕の話を聞いてくれますか。 もうだいぶ昔のことですが、僕は中学卒業後に零細印刷屋に就職し、働きながら夜間高校に通っていました。そしてそこで彼女と知り合ったのです。彼女の名前は西村かおると言い、僕と同い年の純真で清楚なイメージの優しい女性でした。彼女は某銀行の社員食堂で下働きをしていましたが、夜間高校を卒業したら栄養士の資格を取ることが夢だと語ってくれました。 僕と彼女が親しくなったきっかけは、彼女が病気で休んだ日の授業内容を記したノートを彼女に貸してあげたからです…。 「昨日習ったノートを君に 貸してあげようやさしい君に~」 僕たちは友達以上恋人未満の関係であり、デートする訳でもなく、手さえ握ったこともありませんでした。ただ夜間高校からの帰路を途中まで一緒に帰っていただけなのです。夜間高校は四谷にあったのですが、僕が住み込みで働いていた印刷屋は荻窪で、彼女は下高井戸にある銀行の独身寮に帰るので、いつも新宿駅で別れていました。 でも帰宅途上の金曜日に、どうしても彼女ともう少し話がしたくて、彼女を新宿地下街にある喫茶店に誘いました。彼女は自分も同じことを考えていたと言い、明るい笑顔で僕のあとについてきました。ただ残念ながら二人とも門限があったので、小一時間程度しか寄り道が出来なかったのですが…。 「遅くなるからさよならしよう 話し合ったらつきない二人~」 そんなミニデートが何回か続きましたが、彼女の誕生日が近い8月2日の日曜日に、ついに本格的なデートの約束を取り付けることに成功したのでした。初めてのデートは読売ランドです。僕は小躍りするほど嬉しくて溜まらない。こんなに心がうきうきしたのは、生まれて初めてかもしれません。 読売ランドでは、ジェットコースターをはじめ沢山のアトラクションを体験しましたが、お化け屋敷で彼女が僕にしがみついてきたときは、感動の余り天にも昇る気分でした。僕は思わず遊園地の外れに咲いていた野ばらを積み、ふざけて彼女にひざまずき、その野ばらを捧げたのです。それはふざけ半分・本気半分だったのかもしれません…。 「白い野ばらを捧げる僕に 君の瞳があかるく笑う~」 その日を境にして二人は急接近し、恋人になってやがては結婚へと…考えるでしょう。ところがギッチョンその真逆で、その後彼女は急によそよそしくなってしまったのです。そしてある日突然、夜間高校をやめて昼間の大学に行くと言い、僕の前から姿を消してしまいました。一体彼女に何が起こったのでしょうか…。 後日わかったのですが、彼女は勤務先の銀行の頭取に見初められ、頭取の息子と見合いをし結婚を前提に付き合っているとのことでした。それにしても女心は金次第だったのでしょうか。また彼女は野ばらよりもクロッカスの花が好きだったとの噂も聞きました…。 「かおるちゃん 遅くなってごめんね かおるちゃん 遅くなってごめんね 花をさがして いたんだよ 君が好きだったクロッカスの花を~」 な・なんだと!、これじゃあ『美しい十代』ではなく、『花はおそかった』じゃないの! 作:河村 道玄 昭和歌謡ラプソディーはこれで終わりではありません。これからシリーズ化したいと考えていますので、乞うご期待!。 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
パチパチパチパチ
うわああ、面白いわ、 昭和の匂いぷんぷんさせて、 恋まで昭和で私も昔思い出して ジーンと来ました。 昭和歌謡ラプソディシリーズ、 きたいしてまーす。 リリコ (2022.08.12 11:25:14) |