「成年後見制度の運用における諸問題について」(その3)
21日、23日の続きです。最後に、任意後見契約の濫用的な利用事例についての説明がありました。これは、任意後見契約を結んでおきながら、ご本人の判断能力が衰えても任意後見監督人の選任の申立をせず(任意後見契約の効力が発生しない)、別に結んでいる任意代理契約を継続するケースなどです。任意後見監督人が選ばれるということは、裁判所が間接的にその任意後見契約を監督するということですから、そのようなことをされると困る何らかのことが行われていれば、当然、任意後見監督人の申立はされない訳です。(=任意後見契約の効力は発生しない。)任意後見の看板を使いながら、実際に判断能力が衰えても任意後見契約の効力が発生しないわけですから、このような使われ方は非常に問題がありますよね。また、親族間の遺産分割の前哨戦のような形で使われるケースもあるとのことで、ご本人を守るための制度が、逆手に取られて利用されているということに、なんだか悲しい気持ちになってしまいました。任意後見と法定後見は、任意後見が優先するのですが、任意後見契約に関する法律4条1項2号、10条1項などで、「本人の利益のために特に必要があると認めるときに限り」法定後見が優先するケースも理論的には想定されています。任意後見の範囲が狭いケースや、ご本人の方がどんどん法律行為(買い物など)をしてしまうケース(任意後見には取消権がない)などでは、該当することもあるのではないかとのことでした。一連のお話の中で、私も教科書として使っている「東京後見センターにおける成年後見制度運用の状況と課題 判例タイムス1165」の発行(平成17年1月)から、すでに変更している部分もあるとのことで、後見制度もどんどん変化しているのだな~ということを実感させる研修となりました。