Bag's Groove
マイルス・デイヴィスは、イリノイ州アルトン生まれの天才ジャズトランペット奏者。とにかく、ジャズを語る上で最重要人物で、ジャズ界の“帝王”と呼ばれています。ジャズ歴史上の、節目節目にクール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ、フュージョンなど、演奏スタイルを巧みに変化させ、時代のニーズ応じて様々な音楽性を見せた先駆者です。マイルスの名盤はとにかくたくさんありますが、今回紹介するアルバムは、モダン・ジャズが最も成熟していた時代の「Bag's Groove」マイルスとモンクの喧嘩クリスマスセッションで有名なプレスティッジの名盤の紹介です。喧嘩セッションといっても演奏中、殴り合い大乱闘をしたわけではなく、大先輩、師匠といえる存在のセルニアス・モンクに対して、マイルスは「俺がソロを入れる間はピアノのバッキングは要らない!!引っ込んでろ!!」と言われた事に、「この若造、俺に指図する気かよ」と、モンクが腹を立てて「伴奏不要ならヒアノソロもやめてやるワ!!」と、自分のソロの順番が回ってきてもモンクはソロを入れずにふてくされていた。この事が喧嘩セッションの謂れの様ですが、後に、喧嘩については、マイルス本人が自伝でキッパリと否定しています。モンクはこの頃、双極性障害(躁鬱病)に苦しんでいたため、強い精神科薬を服用していたため行動緩慢、倦怠、眠気、行動障害など謙虚に症状が現れていて、自分のソロを飛ばしてしまったようです。モンクは大先輩、師匠ではありますが、バンドリーダーはマイルスなので、マイルスが設定した演奏上のルール(演奏スタイルや方向性、ソロの順番など)が効を奏しているのは同然で、モンクに指示する立場でした。また、モンクのバッキングはホーン楽器、(特にトランペット)と相性が悪く、マイルスとはシンコペーションの(俗に言う食い)感覚が合わない事から、俺のソロのときはバッキングは入れないで欲しいといった事が、いつしか喧嘩セッションとなってしまったのが真相のようです。#3,4,5,6,7曲はHorace Silverがピアノを担当し、こちらは、特色のあるファンキーなプレイスタイルでマイルスとの相性もピッタリです。また、非常にシンプルでツボを押さえていて、少ない音で最大限の効果を狙うバッキングを随所披露していています。マイルスとシンコペーションのタイミングもぴったりで落ち着いて聞け、どちらかといえばホレス・シルヴァーのピアノが好演です。知的な感じが全体に漂っていて、これぞ4ビートジャズの金字塔ともいえる内容のアルバムです。どの曲もクセなく聴きやすい一枚なので初心者リスナーも純粋に楽しめるお勧めの名盤です。【曲】1.Bag's Groove (take 1)2.Bag's Groove (take 2)3.Airegin4.Oleo5.But Not For Me (take 2)6.Doxy7.But Not For Me (take 1)【パーソネル / 録音】 マイルス·デイビス Miles Davis (tp) ソニー·ロリンズ Sonny Rollins (ts) #3,4,5,6,7 ミルト·ジャクソン Milt Jackson (vib) #1,2 セロニアス·モンク Thelonious Monk (p)#1,2 ホレス·シルヴァー Horace Silver (p) #3,4,5,6,7 パーシー·ヒース Percy Heath (b) ケニー·クラーク Kenny Clarke (ds) #1-2 1954/12/24 #3-7 1954/07/29 Miles Davis「Bag's Groove (Take 2)」をYou Tubuで試聴できます。 にほんブログ村