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2021.07.03
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カテゴリ:進化

 NHK総合の『ダーウィンが来た!』は、僕が毎週観ているネイチャー番組だが、13日の「珍獣フクロネコと暮らしてみた!?」はとりわけ興味深く観賞した。

​◎タスマニア島はオーストラリア大陸と動物相はほとんど同じ​
 オーストラリア、タスマニア島の古い農家に住み着いた小型肉食有袋類フクロネコ(写真)の親子1年間を、現地のテレビティレクターが観察した番組だが、フクロネコの仔の愛らしさ、同じ肉食有袋類ながらフクロネコより2回りは大きいタスマニアデビルとの掛け合いなど、目が離せないシーンが続いた。



 タスマニアは、今でこそ島だが、8000年前までオーストラリア大陸と一体だった。だから動物相はオーストラリア大陸とほとんど変わらない。​

​​​◎タスマニア島で最後まで生き延びていたサイラシンも今は絶滅​
 今でこそ本土のオーストラリア大陸では絶滅したが、肉食有袋類であるフクロネコやタスマニアデビル(写真)は、避難所であるタスマニア島で生き残っている。



 タスマニア島では、1936年まで生き残っていたサイラシン(写真=フクロオオカミ)も、アボリジニの祖先が連れて来たディンゴとの生存競争に敗れて絶滅するまで、オーストラリア大陸に生息していた。サイラシンは、オーストラリア・タスマニアの生態系の頂点に立っていた(17年2月26日付日記:「生物のニッチということ、収斂進化のサイラシンはディンゴに敗れた;そしてマダガスカルのメガラダピス」、及び06年8月12日付日記:「人に最も愛された家畜の犬とサイラシンの物語」を参照)。



​​​​◎捕食する草食有袋類の体サイズに合わせて登場​
 さて番組からは離れるが、興味深いのは、進化学的な事実である。草食有袋類から派生分岐したと思われる肉食有袋類が、前記の80年前に絶滅したサイラシン(下の写真の上=フクロオオカミ)、タスマニアデビル(下の写真の中央)、そしてフクロネコ(下の写真の下)と、この順序で大きさが小さくなって勢揃いしていることだ。







 彼らは、それぞれのニッチに合わせて進化したのだ。サイラシンは大型のカンガルーなど、タスマニアデビルは中型有袋類のワラビーや死骸など、そしてフクロネコはもっと小さいネズミや昆虫などを食べている。

​​​◎生態系の頂点に立ったサイラシンも、歴戦のディンゴの渡来で競争に敗れる
 さらに視野を広げてオーストラリア大陸の有袋類を見ると、ここが並行進化例の展示場であることは極めて興味深い。並行進化とは、系統を異にする動物群が、それぞれの生息域で生態的地位に合わせて似通った体形などを進化させることだ。
 前記のサイラシン(フクロオオカミ)はその和名のとおり、アジア・北米の有胎盤類のオオカミと同じ生態的地位に立っていた。形態や生態、さらには歯牙に至るまで、オオカミと相似した。サイラシンは有袋類であるのに、オオカミはそれとは別系統の有胎盤類哺乳類である。起源は全く異なるのに、相似形とも言うべき形態と生態を進化させた。
 それだけにオオカミの家畜化された種である野生化したディンゴと、まともに競合した。アジアや北米で、様々な大型草食獣を捕食していたオオカミの一系統であるディンゴ(写真=ヒトが1度家犬にしてオーストラリアに連れて来てから、野生化したイヌ)に、閉鎖されたオーストラリアという狭い生態系だけで生きてきたサイラシンは太刀打ちできなかったのだ。



​◎フクロネコ、フクロモモンガ、フクロアリクイ​
 さらに本欄で取り上げたフクロネコも、収斂進化の一例である。フクロネコは、アジアの有胎盤類ネコ科の家猫の祖先であるリビアネコと、よく似ている。
 さらに驚くかされるのは、空を滑空するモモンガと、飛行の様子も形態も酷似するフクロモモンガ(写真)の存在だ。フクロモモンガは有袋類であり、有胎盤類のモモンガとは系統が全く異なる。それでも樹から樹へと滑空して移動する生態は、独自に進化したのだ。



 アリを食べるフクロアリクイという種もいる。有胎盤類のアリクイと生態が似ており、したがって形態も似る。​

​​
​◎かつてはフクロライオンもいた!​
 さらに過去に遡ると、さらに興味深い収斂進化例に行き当たる。ちょうど人類がオーストラリアに登場した頃である5万年前頃に、大型肉食有袋類ティラコレオが絶滅したが、ティラコレアは、和名のフクロライオンのとおり、ライオンそっくりであった。オーストラリアで最大サイズだったティラコレアは、これも過去のオーストラリアで最大だった草食有袋類のディプロトドン(​下の写真の上​:オーストラリア博物館に展示されているディプロトドン)を襲って捕食していた(下の下の想像図)。





 興味深いことにディプロトドンも、人類到達前後に絶滅している。
 オーストラリア先史時代の超早期に、ディプロトドンの骨と石器が共伴する遺跡が見つかっているから、ディプロトドンの絶滅に人類が関与した可能性は高い。ディプロトドンが絶滅すると、それを捕食していたティラコレアも絶滅に追い込まれたのかしれない。
 オーストラリアとそれに付随するタスマニアは、まさに収斂進化の展示場であったのだ。​​

昨年の今日の日記:「札幌の旅(5):今年は待たずに入れた回転寿司の「花まる」で満腹」






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Last updated  2021.07.03 06:36:42



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