|
カテゴリ:東京下町の暮らし
妻の日本語学習が、ようやく軌道に乗ってきました。
妻が日本語教室に通おうと思い立ったのが、今年10月の初め。とはいえ、授業の時間、2歳になる娘をどこに預けるか、というのが、制約条件になっていました。ここは目下人口急増中の東京江東区。保育所という保育所は、一時預かりを含めても、ことごとく空きがない。もしくは、空きがあっても、日本語の授業時間と合わせられないものばかりでした。 そんなある日、吉報がありました。例の日本語教室の会場は、江東区の施設「パルシティ江東(男女共同参画センター)」というところなんですが、そこで公認の活動を行う区民に対し、一時保育のサービスを提供しています。「日本語教室に通う」というのも、立派な公認活動ですので、そこの一時保育のウェイティングリストに載せたところ、約1ヶ月で空きが出て、めでたく、娘を預けることができたのでした。 特筆すべきは、その料金。日本語教室は、毎週金曜日、2時間授業なのですが、その授業料が500円。さらに同じ時間帯、パルシティ江東の一時保育を使うと、保育料が300円。合わせて800円で済むのです。 いまの世の中、2時間、日本語の授業に出て、かつ2時間、子供を預けて、合計800円で済むなんて、普通は考えられないですよね?そういえば、私が以前住んでいたオーストラリアでは、永住権を取った移民に対して、英語教室を政府が無料で提供する、というものがありますが、授業の時間帯、託児サービスも格安で提供するという話は、まだ聞いたことがありません(どこかでやってるのかもしれませんが)。 江東区で受けられる子供向け福祉サービスは、これにとどまりません。まず、子育て支援センターが、区内4ヶ所にあり、親の同伴という条件つきですが、利用料金はすべて無料。専門の保育士さんが常駐しているので、親は施設内で、子供に煩わされることなく、ゆったりできます。あと、児童館がやたら多い。区内で19箇所もあります。児童館は遊具も揃っており、子供向けのいろんな活動をやっているので、大変重宝します。さらに、江東区の医療費助成制度のおかげで、子供の通院医療費が中学卒業まで基本的に無料・・・。 これだけみると、日本ってかなり手厚い福祉国家みたいに思えてきます。実際、妻もそのように感じているのですが、よく考えると、「東京23区だから」、ハード面もソフト面も、これだけ手厚くできるんですね。 たとえばの話、私が生まれ育ったのは千葉県柏市。東京から至近距離にある、郊外ベッドタウン。でもそこでは、児童館が2ヶ所しかない。人口は、江東区が44万、柏市が38万で、ほぼ同じなのに、児童館の数は、江東区が19で柏市が2なのです。あと、子供向けの医療費助成も、江東区は15歳までなのに、柏市は4歳まで。子育て支援センターにしても、江東区は4ヶ所、柏市は1ヶ所。江東区には全国モデルとなる先進的な取り組みがある一方、柏はまだまだ、これからです。 さらに、社会インフラの整備度合いも、大きな違いがあります。江東区を含め、東京23区は「日本国家のショーウィンドー」。車道も歩道も、立派に整備されています。それが千葉県に入ると、とたんに車道は狭く、歩道もなく、間に白線がひいてある道路ばっかりになる・・・。私を含め、柏で育った者は、ブロック塀と、走ってくるクルマの間のわずかな隙間を、自転車で器用にすり抜ける技術を、誰もが身につけていますが、歩道の整備された江東区で育った子供は、そんなスキルを身につける必要はないでしょう。 そういえば、私自身も子供時代、東京23区内に住んでいた頃の遊びは「児童館で竹馬」だったのに、柏に引っ越してからは、それが「路地裏のドッジボール」に変わったもんなあ。ま、子供の遊び場が路地裏になること自体、社会インフラ整備の遅れを、物語っているわけなんですが・・・でもその代わり、柏では小学校の広い校庭で遊べたので、その点では恵まれてました。都内には、広い校庭をつくるだけの土地がないですから・・・。 無論、都心部と郊外との、ライフスタイルの差も考えなければなりません。江東区のように、ほぼ全域が市街化されて久しい地域と、柏市のように、郊外住宅地と農村が混在するような地域では、社会資本整備のテーマも違ってきます。柏では、学校の校庭が広いし、アウトドアもそれなりに楽しめるから、そもそも、児童館をつくる必要は、そんなにないのかもしれない。また柏では、これまで森と畑しかなかった地域を、区画整理したり道路を通したりすることに、お金を使わなきゃならないけど、すでに市街地化された江東区ではその必要はあまりない等々・・・。 とはいえ、財源の潤沢さ、という面でいえば、東京23区はやはり恵まれています。日本を代表する企業の本社がたくさんあって、そこからあがる事業税が都と区の財源になりますから、当たり前なんですが・・・むろん、23区内にも、財源の厳しい区はいくつかありますが、それでも、私のように、23区の外で育った者からみれば、「やっぱり、腐っても東京23区」だと思います。福祉サービスには、当然ながら、お金がかかる。だから、お金のある東京23区と、隣接する千葉県や埼玉県の自治体とで、差が出てしまうんですね。 話はもとに戻りますが、妻は一回500円の日本語の授業に、満足しているようです。ボランティア教師とはいえ、日本語教師資格を持った人が多く、言葉遣いの文化的な背景まで説明してくれる先生もいて、それなりにクオリティのある授業のようです。また、一回300円の託児サービスもしっかりしていて、娘も喜んでいます。福祉国家東京都万歳ですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[東京下町の暮らし] カテゴリの最新記事
|