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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:マスコミ試写
スラムドッグ$ミリオネア 映画の話 テレビ番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、賞金を獲得したジャマール(デヴ・パテル)だったが、インドのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。ジャマールになぜこれほどの知識があり、この番組に出演するに至ったのか。警察の尋問によって、真実が明らかになっていく。 映画の感想 これは凄い!スクリーンから発せられる凄まじいエモーショナルに圧倒されっぱなしだ。本年度アカデミー賞8部門受賞も納得のクオリティだ。 以下ネタばれ注意 映画は意表ついた場所から動き出す。人気クイズ番組「クイズ$ミリオネア」で、前人未到の2000万ルピー(約4000万円)が掛かった最終問題までたどり着いたスラム育ちの青年ジャマールに不正疑惑がかかり、警察に連衡されで尋問&拷問される恐ろしい幕開けである 本作は大きく分けて3つのパートで成り立っている。 (1)警察で尋問を受けるジャマール。 (2)「クイズ$ミリオネア」収録スタジオでクイズに答えるジャマール。 (3)ジャマールの生い立ちを描く回想シーン。 この現在と過去を交差させた3つのパートが、それぞれの役割を得て大きな太い一本の道となる構成が秀逸だ。 スラム育ちで無教養のジャマールを頭ごなしに「クイズの答えが判るわけが無い」と決め付ける警察と、携帯電話会社のコールセンターでお茶汲みの仕事をするジャーマールを「お茶汲み」と見下すクイズ番組司会者。映画はジャマールの辿った過酷な人生が舞台となるインド、ムンバイが発するギラギラとした凄まじいパワーを伴い描かれる。 宗教弾圧の争いに巻き込まれ兄弟の目の前で殺される母、孤児となった兄弟は同じ様に両親を亡くした少女ラティカと共に強かに生きるが、そんな孤児たちを食物にしようとする腹黒い悪党に捕らわれる。悪党の本当の魂胆を知った兄弟はラティカを連れて逃亡を図るがラティカは逃げ遅れ、再び兄弟だけの逃避行となってしまう・・・。 まずクイズ番組を通して一人の青年の歩んだ過酷な人生を炙り出す構成が上手い。それもクイズの問題とジャマールの人生がリンクしていて、物語の所々に後にクイズの問題に出てくる事柄が組み込まれている。出来すぎと言えば出来すぎであるが、バラバラに散らばったパズルのパーツが一つ一つが収まるべき所に埋っていく構成は見事だ。 そして3つのパートをそれぞれ濃密に圧縮して必要な部分を深く掘り下げたダニー・ボイル監督の演出が光る。中でもジャマールの回想シーンはスリリングな疾走感が炸裂していて圧倒されてしまった。イギリス出身のダニー・ボイル監督にとってアウェーな異国を舞台にした作品であるにもかかわらず、監督のビジョンは明確で目標に向かいブレることが無い展開も素晴らしい。インド映画をリスペクトしたラストの歓喜のダンスでは不覚にも目頭が熱くなってしまった。久しぶりに文句の付けようの無いパーフェクトな寓話と言えるだろう。 映画「スラムドッグ$ミリオネア」の関連商品 【枚数限定・両面印刷】[映画ポスター] スラムドッグ$ミリオネア (SLUMDOG MILLIONAIRE) [DS] スラムドッグ$ミリオネア/サントラ[CD] ぼくと1ルピーの神様 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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