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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2011
先月半ばに休館宣言をしてから約一月、やっと当ブログも活動再開です、引き続きよろしくお願いします。
試写会の客入りは95%くらい、主権は読売新聞さんだ。 映画の話 子どもを身ごもるも、相手が結婚していたために出産をあきらめるしかない希和子(永作博美)は、ちょうど同じころに生まれた男の妻の赤ん坊を誘拐して逃亡する。しかし、二人の母娘としての幸せな暮らしは4年で終わる。さらに数年後、本当の両親にわだかまりを感じながら成長した恵理菜(井上真央)は大学生になり、家庭を持つ男の子どもを妊娠してしまう。 映画の感想 いくつか気になる点があるものの、役者の演技と相成り総体的に見てよく出来た力作である。「孤高のメス」で高い評価を受けた成島出監督の勢いがそのまま作品に反映されたのだろう。映画の構成も一癖あり、誘拐事件の判決を物語冒頭に配し「何故本件の誘拐事件が起こったか?」を辿るメインパートと並行して、赤ん坊の時に誘拐され大学生となった恵理菜(薫)の現在が並行して描かれる時間軸をばらした複雑な構成がとられているが、丁寧に作られている為に戸惑う事は無い。wikiによると原作では第一部と第二部に分けられた物語を映画版は一部と二部を並行して描いている、映画らしい大胆な脚色に醍醐味を感じ取れる。 以下ネタばれ注意 まず気になるところを揚げると、希和子が愛人の自宅から赤ちゃんを連れ去った事で警察事件となり、赤ちゃんが顔写真入りのマスコミ報道がされているのに、希和子はその赤ん坊を隠そうともしないのに違和感を持った。通常であれば赤ん坊に帽子をかぶせる、性別を偽るために男児の服を着せるなど変装させるくらいすると思う。そして、事件当初のみ報道がされるものの、その後は警察や報道が動いている気配がまったく描かれていないのにも違和感を持った。その為に誘拐事件を描いているのに緊迫感が感じられないのは難点である。張り出された捜索願のポスター、パトカー、交番など小道具&大道具を使えば容易に誘拐犯の焦りや恐怖が演出出来たと思う。まぁ私は原作を未読の為に不明であるが、2時間27分と言う上映時間に収めるために警察やマスコミは割愛されたのかもしれない。 そこで本作は「どこに焦点を絞るか?」と見てみると、明らかに血の繋がらない擬似親子の親子愛と、大人になった恵理菜が辿った生い立ちに焦点が絞られている。それにしても本作に登場する男は情けない。誘拐事件のきっかけを作った張本人である恵理菜の父は、妻がいながら不倫相手の希和子を妊娠させ堕胎させた駄目男だ。そして現在の恵理菜の交際相手の岸田も妻がいながら悪ぶる気配も見せずに不倫をし恵理菜を妊娠させてしまう。まぁ、そんな相手と交際してしまう恵理菜も駄目である。彼女が父親から受け継いだ遺伝子がそうさせてしまうのだろう。 逆に本作に登場する女性は強い。メインキャストの喜和子と恵理菜しかり、行き場を失った希和子と薫を受け入れるエンジェルホームは女性だけのコミュニティだ。代表のエンジェルを演じる余貴美子は若干演技を作りこみ過ぎている感はあるものの、時代設定となる80年代末期~90年代初頭を象徴するカルト教団オウム真理教辺りを誇張しモチーフにしているのかもしれない。居場所を見つけたはずの希和子と薫であったが、思わぬ事態にホームを抜け出し、ホームで知り合った女性の伝を辿り小豆島に逃避行する。 現在のパートで重要な鍵を握るのが恵理菜誘拐事件を追うフリーライター千草だ。岸田の事を“ストーカー”と勘違いするが、彼女こそが恵理菜のストーカーの様に彼女の生活に踏み込み恵理菜の道先案内人を勤める。千草を演じる小池栄子がいい。普段は図々しく押してくるが、実は男性コンプレックスを抱えオドオドとした態度の女性像を上手く好演している。彼女の素性も意表を付かれた。そして恵理菜の失われた過去の記憶を繋ぐ重要人物となる小豆島の写真館主を演じる田中泯がいい。台詞も少なく存在感だけであの役を演じられるのは彼だけであろう。 そして本作の最大の功労者は希和子を演じた永作博美である。私は正直、彼女は苦手な女優であるが、希和子役の熱演は認めないわけにはいかない。映画冒頭に泣き止まない赤ん坊をなだめる為に、出るはずの無い母乳を与えるシーンがあるがおっぱいが見えないのが難点で、このシーンで惜しげもなく「ハングオーバー!」のヘザー・グラハムの授乳シーンの時のように、普通におっぱいを出していれば女優魂を感じ取れたのが惜しい。まぁ、それを差し引いても彼女の熱演は今後の映画賞をにぎわす事になるであろう。それにしても永作博美と井上真央って二人別々に見ると似ていないのだが、二人がつながったカットで登場すると「?」と一瞬、永作か井上かが判別出来なくなる瞬間が何度かあった。擬似親子を題材にした作品だけに作り手が仕掛けたキャスティングの妙なのだろう。あと一点難点を書くとスコアとBGMの音がでか過ぎて台詞が聞き取れないシーンがあった。近年だらだらとした幕引きが多い邦画であるが、本作は言いたい事を言ってスパッと上手く幕を引く、早くも今年ベスト作品候補確定作品である。 映画「八日目の蝉」へのトラックバックは「新・辛口映画館」にて受付中です。 映画「八日目の蝉」関連商品 【送料無料】八日目の蝉 【送料無料】八日目の蝉 【25%OFF】[DVD] 八日目の蝉 DVD-BOX お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.04.27 17:08:57
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