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台湾役者日記

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2005年06月10日
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カテゴリ:創作物件
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  一目見て、これはいけないと思う。石鹸やブラシやタオルなどの入浴用品がひとつも残っていないだろうことは予想がついたが、実際は予想を超えていて、大ぶりのテラコッタのタイルで整えられた壁や四角い浴槽、床のすべてが、まるで何年も前から使われていないかのように、からからに乾いていた。元は土色をしていたと見えるテラコッタ・タイルの床の上には白い砂ぼこりが堆積し、黒っぽい黴のついた目地をほとんど隠してしまっている。水が出るはずの真鍮製のカランは表面に全く光沢がなく、吐水ハンドルは上に伸びきっていて、調べてみるまでもなく水圧が来ていないと分かる。目を挙げると浴室の窓は開いていて、海が見えた。この家は半島の先のいちばん高い丘の頂上にある。浴室から見えるのは外洋で、はるか遠方の水平線との間には無数の小さな白い波がきらめいていた。風は背後の屋内から吹いてきて、前へ吹き抜けていく。

 もういちど玄関を通り、今度は、浴室の反対側にある食堂に入った。食堂には真ん中に四人掛けの木製テーブルが置かれていて、それはそのままそこにあったのだが、備わっているべき椅子が一脚もなかった。テーブルの中心辺りの天井からは電灯線が垂れ、その先には内側に乳白色、外側にモスグリーンの琺瑯がひかれた円錐形の鉄製笠が吊るされている。ところが、笠の内側に装着されているべき電球は見当たらず、下側から覘くと内面のねじ山がさび付いた空ろなソケットがあるだけだった。


(つづく)


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改稿:2005年7月13日夜(部屋の位置変更w)
改稿:2006年1月23日夜





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Last updated  2006年01月24日 02時54分10秒
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