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2007年08月02日
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今日はみけマンマ、久しぶり入浴介助でした。というより、新人さんが、いまだに機械浴(寝浴 寝たきりの方を寝たまま入れるお風呂)の動かし方を知らないというので、新人さんに機械の動かし方、効率的な介助の仕方などを教えながら、入浴介助をしていました。

一通り、夕方までに何とか10人を入浴。

やれやれ、と思って、あと一人。丸山さん(仮名 80代 男性)。丸山さんは体調が悪いので、入浴は無理だな~清拭(身体を拭く事)で行こう。

清拭セットを持って丸山さんの所へ行くと、丸山さんは顔だけ動かして

「なんや、みけマンマかいな。相変わらず忙しそうやな。」

「忙しいよ~♪でも、今から清拭するから。ず~とお風呂入ってないでしょう~いい男が台無しやで♪」

「またそないな事言って~ワシは昔っからええ男やっつーの。」

髭を剃ったり、身体を拭いたりして、服も着替える。

「はい♪すっきりしました~?」

「…。ズボン、後ろ前、反対じゃないか?」

見てみるが、ちゃんとズボンは前だ。

「ちゃんとズボンはこっちが前ですよ~、ほら、手を入れてみて下さいよ。」

丸山さん、手で確認。

「じゃ、これから夕食ですからね♪」

みけマンマが清拭セットを片づけていると、また丸山さん

「ズボン、後ろ前、反対やろ。」

「そんなことないですよ~ほら♪」

確認。

そして、またみけマンマが部屋を出ようとすると

「ズボン、後ろ前や。」

「そんなことないですよ~ほら♪」

「ぜ~~~~ったい、後ろ前やもん!!」

そんなこんなを10回近く繰り返す(笑)

「ほら、もう一回履いたでしょう。こっちが前♪」

「…。」

「丸山さん、うち、明日も来るさかい。そない心配せんでもええよ。」

丸山さん、ベット柵の隙間から涙目でこっちを見ている(汗)


丸山さん、寂しいのはよ~~~く、分かります。
明日も来るから。

こういう施設にいる方は、ほぼ100パーセント、寂しいのです。

どんなに、


ここが終の住みかだと理解してる人でも、本当は、うちに帰りたいのです。


以前勤めていた施設でも、今の施設でもそうですが、職員が

「ここで機能回復できるよう、一緒に頑張って、元気になりましょうね♪」

と入居者に言うと、家族からクレーム来たりします。

「お金払って、死ぬまでここで面倒みてもらわなければ困るのに、なんて事言ってくれるんだ!」

確かに、死ぬまで面倒見ます。でも、介護職員は決して

「ここで死んで下さい」
「一生家には戻れませんから、一生をここで過ごして下さい」


とは言えないのです。

みんな、家に帰りたいのです。

毎日毎日、荷造りをして

「こちらでは本当にお世話になりました。今日をもっておいとまさせて頂きます。」

と三つ指ついて頭を下げる女性も一人や二人ではありません。


帰り際、一番高齢の90代の男性の部屋を訪室すると、

「おや、お前さん、もう帰るのかい?」

「明日も来ますので♪顔見に来ましたよ。」

外を見ると、台風の影響か、風の勢いが凄い。

「台風が来てるみたいですよ。今日は洗濯物もとんでっちゃうぐらいの風でしたからね。」

「わしも…天国まで飛ばしてくれんかのう。」

「な~んて事言ってるんですか~。寂しいじゃないですか。」

彼は、ふっとうつむくと

「もう、わしはひとりぼっちだ。故郷にも帰れず、ずっと一人だ。寂しいぞ。」

いつも明るい彼が見せる、心の本音だったと思います。


今の時代、自分の家で最期を迎えるなんて、夢のまた夢なのかもしれません。


昔いた施設で、タカさんという70代の女性(仮名)がいました。
とても頭はしっかりしていましたが、身体がすでに拘縮していて、かっちんこっちんでした。
タカさんはずっと独身で、身よりもなく、お金はありましたが、彼女の部屋はいつもひっそりしていました。

タカさんはとてもお洒落な方でしたので、できるだけ職員も口紅を塗ってあげたりして、お洒落を維持できるようにしていました。

そんなタカさんが、午後、突然ベットの上で号泣しだしました。

「タカさん、どうしたの、どうしたの。どこか痛いですか?」

「…。寂しい。」

「寂しいんですか。」

「寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。」

タカさんは歯が折れるんじゃないか、というぐらい食いしばって泣いていました。

「タカさん、みんないるよ。一人じゃないよ。」

みけマンマらが手をにぎって話しかけても、タカさんはずっと泣き続けました。

それからしばらくして、タカさんは脳梗塞で入院し、病院の窓際のベットでひっそりと、夜中の12時に天国へと旅立って行きました。

「すみません、この人、どこ連絡していいのか分からなかったので、こちらの施設に連絡させてもらいました。今、亡くなりました。」

タカさんは、死をもってようやく底沼の孤独から解放されたのだろうか。

誰か故郷を想わざる
  西条八十 作詞
  古賀政男 作曲
一 花摘む野辺に 日は落ちて
  みんなで肩を 組みながら
  唄をうたった 帰りみち
  幼馴染みの あの友この友
  あゝ誰か故郷を想わざる

二 ひとりの姉が 嫁ぐ夜に
  小川の岸で さみしさに
  泣いた涙の なつかしさ
  幼馴染みの あの山この川
  あゝ誰か故郷を想わざる

三 都に雨の 降る夜は
  涙に胸も しめりがち
  遠く呼ぶのは 誰の声
  幼馴染みの あの夢この夢
  あゝ誰か故郷を想わざる












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最終更新日  2007年08月02日 23時24分08秒
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