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身体・感覚とアート

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ゆぱさん

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2005年11月05日
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M氏は無事に日本へ帰ったあと、ワシューチンになんとか再会したいと探した。

しかし、ワシューチンはありふれた名前で再会することはできなかった。

抑留当時、ワシューチンのフルネームや再会のための手がかりがあればなどと考える余裕がなかった、とM氏は残念そうにいった。

お別れに絵を送ったのが一生の別れになった。


『「そうだ!あの絵を記念として彼に贈ることにしよう。

紙もない、絵の具もない収容所生活の中で、

チリ紙の代用に取っておいた火薬の包装紙のシブ紙に、彼から貰った紫の粉インクで描いた収容所の滲んだ遠景は

、粗末な風景画ではあるが、きっと喜んでくれるにちがいない」

と思った。
 
いよいよ別れの朝がきた。カラカラに晴れ上がった早朝、彼はジープに乗ってハバロスクへ出発することになった。

わたしが、例の風景画を差し出すと、大きな手で私の手を握りしめ
「有難う!有難う!お前は日本に帰らないでシベリヤに残ってくれ、

嫁さんは俺が世話するからシベリヤに残ってくれ、

そしてまたどこかで会おうじゃないか」といった。

目頭に熱いものを感じたけれど、わずかばかり覚えただけのロシア語では、わたしの感情を表現しきれなかった。

「ドスベダーニヤ(さようなら)」の言葉を残して行ってしまった。

モミの木立で囲まれた一本道に、エンジンの爆音がいつまでもこだましていた。』

(『野バラの実に』)





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最終更新日  2005年11月05日 07時49分55秒
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