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カテゴリ:M氏の像 相模原個展へむけて
親しい友人と相次いで別れて、異国の地でなお取り残される。
それは心細い。 さすがのM氏もちょっと落ち込んだ時期があった。 さらに、工事してきた鉄道にいよいよレールが敷かれることになり、過酷な作業が続いた。 そんななか、ついに「帰国」の知らせがはいる。 シベリアに抑留されて、4度目の正月の前だった。 『ついに、収容所の前に、レール敷設車がやってきた。 ものすごい機械音が交錯する中で、警戒兵と囚人達の怒号がとび交う凄まじい作業風景が展開した。 零下2,30度の中での昼夜兼行のレール敷設作業が、収容所前で行われた。 (略) 経理事務室のストーブの横で、、大きなロシヤソロバンをはじいていたとき、 突然、警鐘を乱打しながら、 「ダモイ、ダモイ、(帰国だ、帰国だ)全員すぐ収容所にもどれ」とがなり立てる警戒兵の声が飛び込んできた。 待ちに待った声だった。 収容所内は湧きに湧いた。 70余名全員をナホトカへ送るために、今夕貨車が入ってくるから、すぐ帰国の準備をせよ!という。 もう何もいらない。身体さえあれば十分だ。 心は早や祖国の上を駆け巡っていて、何も耳に入らなかった。』 (「野バラの実に」より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年11月11日 08時47分27秒
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