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身体・感覚とアート

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2006年10月03日
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カテゴリ:捕虜体験記より
ほかに医者がいないことはよくわかっている。

断るわけにはゆかないが、さりとてなんとしたものであろう。

可愛い教え子が思いもかけぬシベリアでこんな窮地に立とうとは、大学の先生がたもたぶん予想されなかったであろう。

しかし、日本の医者は産後の始末も知らないといわれたのでは、教えてくださったお偉い先生がたにも申しわけがなかろう。

医務室に戻ってきても、すぐには知恵も浮かばない。

[当時、医務室の衛生兵3人のうち、本来は眼科専門であるが産婦人科での研修の経験をもつ荻野上等兵が補助役を引き受けることになり、収容所を出て出産現場に急行した。]

着いてみると、なにぶん駅の建物であるから、個室らしきものはなにもない。

事務室ともいえない、あるいは待合室に当たるのだろうか、中央の大きなガランとした一室にきわめて簡単な仕切りをして、そこに四家族ほどが住みついているとみえる。

箪笥(たんす)代用のトランクとか、鍋釜(なべかま)バケツの類もあり、とにかく仮の住まいとしても、一応の生活の場が整えてある。

いくつか寝台も見える。

そして入り口の扉から入って左手の一番奥の窓に接して一つの寝台があり、その上に産婦が寝ているのであった。

われわれがはいって行くと、いままでなにか声高に話していた10人ほどの男女は、急になりをひそめてわれわれの動作を伺っている様子である。

 野口氏[通訳]はさっそく流暢(りゅうちょう)なロシア語でその人たちと話しはじめている。

「じゃあ軍医殿、始めましょう」荻野衛生上等兵(ほんとうなら荻野先生といわねばばらないが、それは今の場合許していただくことにする)がなれた様子で診察を始める。

私はその巧みな手つきをじっと見守るばかりである。





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最終更新日  2006年10月03日 08時04分52秒
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