オーダーメード治療とはその患者さん一人ひとりに合わせて個別化した治療を行うことで、オーダーメードというのは和製英語なので、もとのテーラーメードという言葉も使うことがあります。
さて、昨日は久し振りに乳癌の手術、ドクターTの腕の見せ所です。
症例1MLO posted by (C)ドクターT
症例1CC posted by (C)ドクターT
患者さんは右の血性乳汁分泌としこりを自覚して、カワイ外科の外来を受診されました。右乳頭近くに腫瘤があり、一部に陥凹が見られ、乳頭を圧迫すると血性分泌物が出てきます。エコーで見ると、多房性ののう胞があり、内部に隆起性病変があります。鑑別すべき疾患はのう胞内乳癌とのう胞内乳頭腫ですが、穿刺吸引細胞診を行うとクラスIIIbが出ました。細胞診の判定はクラスI(異常なし)からクラスV(明らかな癌)までで判定しますが、中間のクラスIIIをIIIa(どちらかと言えば良性)とIIIb(どちらかといえば悪性)に分ける場合があります。この時点では皮膚の陥凹と合わせて乳癌を疑い、全摘を勧めました。(大きさが3cmを超えることと乳頭近くの病変なので)
上のマンモグラフィー(MMG)は市民病院へ行き撮ったものですが、多房性ののう胞が写っています。周りへの浸潤所見がありません。これを見て、もし癌でなかったら全摘するのはまずいと思いました。
そこで、全身麻酔をかけてまず腫瘤の切除を行い、術中迅速組織検査で判断して術式を決めることにしました。小さな市民病院では常勤の病理の先生がいませんので、術中迅速組織検査の判断もドクターTが行います。
その結果は大部分が良性ののう胞内乳頭腫でしたが、一部に癌化が見られました。その大きさは1cmなく、温存手術で充分であろうと判断して、次にセンチネルリンパ節生検を行いました。センチネルリンパ節にも転移はなく、リンパ節郭清は省略して手術は終わりました。温存手術は術後に放射線治療に通院する必要がありますが、ドレーンも入らず、4~5日で退院できますので、お正月は家で迎えることが出来ます。
画像診断・局所所見と細胞診の結果が乖離することがよくあります。そんな場合は術中迅速組織検査を行って判断しています。