California Journal

いとこの次女の方がやってきた。
伯母は祖母の部屋で、数日前にひとモンチャク起こして帰ったので
一人ではこられないのだろう。
でも、死にゆく母の最期があれで終わるというわけにはいかないだろうと
次女が伯母を一緒に、つれてきた。

私は祖母の横で爆睡していたところだった。
椅子を並べて板をその上におき、座布団を置いて
祖母のベッドの高さにあわせて、７月８日から日夜添い寝をしている。
祖母の手を握って、毎晩寝ている。こうすると、とてもよく寝てくれる。
少々の痛みなら、和らげてやることもできた。

爆睡中、伯母たちがやってきた。

「おばあちゃん、よく寝てる？」

気遣いながら入ってきた次女の横から、力士のようにドカドカと
暑苦しい顔をした馬鹿伯母が入ってきた。

「ねてるんやったら、帰ろか！私は頭がおかしいと思われてるらしいから！！」
そういって、私の顔をじろりと睨んだ。
あの、異常な目だった。

箱の事件があったとき、母は伯母に言ったらしい。

「あんた、ほんまに頭おかしいのとちゃうの？
ナデシコもあんたの頭がおかしいって言うてるわ！」

と、私の名前まで出したそうだ。そりゃぁ、睨まれますわな。
とんだ災難のナデシコ。
そんなことを言ってまでも、敵味方を作って戦いたい馬鹿母。

そして、伯母は大きな声で祖母を起こし始めた。

「おかあさん！おかあさん！今日ね、H子さんから電話があったんよ。
お母さんによろしくって、言うてはったよ。」

目を開ける祖母は、伯母の顔をみて眉間にしわをよせた。
そして、静かに目を閉じて、首を横に振った。

「おばあちゃん、大丈夫。大丈夫やからね。。。ゆっくり休みよ。。。」
私が優しく祖母に言うと、祖母は数回うなづいて眠りに落ちた。

その後、眠りに落ちる祖母の横で、伯母は話を続けていたのかどうかは知らない。
私はいたたまれなくなって、祖母の部屋を出たから。

祖母は怒っている。
伯母が大声で怒鳴って、部屋を出て行ったことだって
祖母は分かっている。
伯母が今日、私に憎しみの刃を向けた事だって祖母は分かっている。
だから今日、祖母は伯母の顔をみても喜びもしなかった。
眉間にしわをよせて、目を閉じ、首を横に振った。
祖母の頭はまだしっかりしている。祖母は眠りにつく前
私の顔をみて、私の名前を呼び、「あんたはきれいな白い歯しとるなぁ。」
そういったのだから。

馬鹿伯母よ。あなたはもう終わった。
祖母には愛想をつかされていますよ。
こんな形で終わってしまったのは、馬鹿伯母、あなたの責任。

父母私、３人で食事中にいろんな話をした。

伯母がおかしいということは、家族のみんなはきっと分かってるはず。
でも、そういった類の家族の不幸や問題を、こちらへ知られることは
あちらのプライドが絶対に許さないものだから、そう思っていたとしても
それを認めることはないはず。
だから、今後私たちができることは、どーんと構えて
何も言わないこと。
沈黙を守ること。
今後一切、あちらの非もこちらの事情も言い訳も
言わずにいよう。
あちらはこっちのペースを乱し、心を乱すことだけを
目的としているのだから、こちらが何もいわなければ
あちらは一人相撲をとることになるだけ。

そうすることにした。