カテゴリ:ある女の話:サキ
今日の日記
(発熱その後と「龍馬伝」「新参者」「女帝 薫子(新ドラマ)」感想☆) サキ22(彼からの告白) 赤木くんが私の手をギュッと握る。 すっかり秋になった冷たい夜の空気の中で、 包まれた手だけが温かい。 そして、その手をふりはらえない自分がいた。 「オマエの男がどんなヤツか知らないけど、俺は下心あるから。 オマエのこと友達として見て無いから。 友達じゃねーし。」 赤木くんは一気にそう言うと、 手を離して立ち上がった。 いきなり離れた手が、寒い。 「行こ。帰ろう。」 赤木くんがこっちを見て言った。 私は立ち上がらなかった。 このまま帰りたくない。 自分で自分がよくわからない。 私は… いわゆるチキンってやつだ。 いざ、気になってる人が自分に来たら、ビビってしまっている。 どうしよう?!って思ってる自分がいる。 頭の上から赤木くんの声がする。 「気にしなくていーよ。 何か言ったらスッキリしたわ、俺。 だから…」 赤木くんは、ためらうような息を吐いた。 「もう、来んなよ。 俺、勘違いすっから。」 ワザといつもよりぶっきら棒な言葉を言って、 無理に笑顔を作ったのがわかる。 ”来んなよ”って言葉が頭に響いて、 胸の奥がズキンと痛んだ。 心が痛むって、表現だけじゃなくて、本当に胸が痛むんだって思った。 手が微かに震える。 そして、それが、もう私達の微妙な関係の終わりを告げている気がした。 赤木くんが背を向けようとしている。 どうすれば? どうすれば、この仲をまだ続けられる? どうすれば、彼を引き止められる? 「赤木くん…」 ようやく声をふりしぼった。 行かないで欲しい。 でも、そう思う自分はズルイ。 わかってるけど… 「もう… 口…きいて… くれなくなっちゃう…?」 言葉といっしょに涙が出てきた。 いきなりのことで頭が回らない。 泣くのを止めなきゃって思うのに、 出ない言葉とは逆に、涙がこぼれる。 「え? 何言ってんの、オマエ?」 「友達じゃなくなったら… もう、口きいてくれなくなっちゃう?」 「そんなことねーよ。」 赤木くんは座ってる私の目線に合わせてしゃがみ、 無理やり笑顔を作って、私の頬の涙を指でぬぐった。 「良かった… 困る。赤木くんとしゃべれないと… 私…」 自分が自分じゃ無くなったみたいだ。 こんなことで泣き出すなんて。 もっと自分は強いやつだと思っていた。 こんなことは初めてだった。 カッコ悪いって思って、急いでハンカチをカバンから出した。 でも、なんだか止らない。 どうしよう…。 「泣くなよ…」 ベンチの隣にまた座った赤木くんが、私を抱き寄せた。 温かい彼の胸に、そのまま身を任せる。 こんなことをしちゃいけないと思う。 そんな立場じゃ無い。 だけど… 赤木くんの温かい手の平が私の頬を包む。 彼の唇が頬に触れた。 顔を離すと目が合った。 私をじっとみつめる目。 顔が近付いてきた。 唇と唇が触れる。 柔らかい唇。 カズユキとは違う。 頬にあった手が頭の後ろ側にまわった。 抱きしめられた腕で腰を引き寄せられる。 柔らかく舌がからまる。吸われる。 拒めない。 私は、彼を拒めない…。 赤木くんは顔を離すとギュッと私を抱きしめた。 「好きだ…」 聞こえるかどうかのかすれた声が耳元に聞こえた。 今度は胸が締め付けられるように、キュンと音をたてた気がした。 赤木くんは、私を立ち上がらせて、肩を抱き寄せて歩かせた。 私の寮の方へ歩く。 何か言わないと… でも言葉が出ない。 「でも、 俺は、都合がいい男になる気ねーから。」 赤木くんはそう言うと私から離れた。 「友達なら…側に来るなよ。 泣いてもダメだ。 じゃな…。」 淋しそうに言って、駅に向かって行く赤木くんの後姿を見てるだけで、 私は何も言えずに道に立っていた。 呼び止めたいのに…。 頭が真っ白になるって、 こういうことなんだと思った。 (続く) 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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