|
カテゴリ:外来診療一般
さて次に勉強になったのは、「細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう:皆様が眼科の外来を受診して顔を乗せる顕微鏡のことです)所見から考えるぶどう炎の鑑別診断」というプログラムでした。
このぶどう膜炎というのは、
「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、実はその患者様の総数は膨大です。
そして「ぶどう膜炎」と一括りにはしているものの、実際にはその中に細かく言うと数百もの病気があると言われており、このぶどう膜炎の診断・治療は良く「推理小説」に例えられるほど難しく複雑です。
今回のプログラムでは、このぶどう膜炎の中でどの病気が多いかの最新のランキングが示されました。それによると、1位のサルコイドーシス、2位の原田病は不変ですが、3位には急性前部ぶどう膜炎(AAU)が入りました。以前にはベーチェット病がトップ3の常連だったのですが、この数年で減り今回も6位という結果になりました。画期的な新薬が開発されたこともありますが、どうも患者様自体が減っているような印象もあります。その理由は良く分かりませんが。
今回のプログラムは日本のぶどう膜炎治療の第一人者の先生によるものでしたが、本当に素晴らしい内容でした。というのは、
外来で診てすぐ分かる顕微鏡所見だけに絞って、良くある病気に付いて「分かりやすくかつ深く」教えて頂けたからです。その内のいくつかを見ておきましょう。
ぶどう膜炎では角膜後面沈着物(KP)というものが出てくるのですが、病気によってその性状には差があります。
原因疾患1位のサルコイドーシスでは、
このように豚の脂のようなベトッとしたKPが出ます。
5位のヘルペス性虹彩炎では、
KPが「整然とした配列」をしているのが特徴です。
9位のポスナー・シュロスマン症候群では、
サルコイドーシスに似ているものの、ちょっと「少なくて薄い」のが特徴です。
25位のフックスでは、
小さくて範囲が広いのが特徴です。
また炎症細胞が眼の表面の下側に貯まる、前房蓄膿(ぜんぼうちくのう)というものがあるのですが、
3位の急性前部ぶどう膜炎ではそれが「山盛り」になり、6位のベーチェット病では「サラサラで水平」になるなど、日常良く出会うぶどう膜炎について非常に良い勉強になりました。
そして、
ぶどう膜炎ではすぐに鑑別のための血液検査に進みがちだが、そうではなくスリット(外来顕微鏡)所見で病気を絞っていくことがまず大切、という講師の先生のメッセージが深く心に残りました。(続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.02.07 14:01:29
[外来診療一般] カテゴリの最新記事
|