無臭国家
『この~毛 何の毛 気になる毛~見たことも~ない 毛ですから○○く~んの~毛に~ なるでしょ~♪』とは、高校時代の友人I君の替え歌だった。○○君のところには、先生の名前が入った。最近ブログを始めて、以前より様々なサイトを見るようになったのだが、改めて、ネットの収益源に占める「広告」の量に驚いている。その広告なのだが、このブログのようなフリーページばかりのシステムになると、ほとんどが美容、サラ金、転職関連の広告だ。私のブログが、特にこの分野に関連会社の多い楽天が運営するものだからかもしれない。また、私は保守論壇のサイトも見るのだが、そこには育毛や再婚の広告も見られる。「目指せ!つるワキ」「あなたの毛穴、誰かに覗かれている」「ナマ脚」「つるスネ」「大食いヤセ子」「地肌対策、大丈夫?」「あのニオイが気になる季節」「スネ毛でお嫁に行けないなんて」…私にとって、こんな感覚は宇宙人のものとしか思えない。全く意味不明のキャッチコピーだ。そもそも、この世の中で、他人の毛穴などに興味がある人間がいるのだろうか。しかも、それを覗く人間など、存在するのだろうか。毛穴の汚れなどがあるとして、それを見極めるには、3.0くらいの視力が必要なのではないだろうか。だから、毛穴の汚れなどを問題にできるのは、視力5.0と言われるアフリカの人くらいしかいないはずだ。能力的に考えて、わが国に、他人の毛穴を判定できる視力の持ち主は、ほとんどいないに等しい。…と言うと、女子大生から笑われた。臭いにしても、この国はとにかく何でも気にし、消したがる。東南アジアや韓国に行くと、町中に様々な臭いがあるのを感じるだろう。屋台は強烈な臭いで充満している。町中も、汗や排気ガスの臭いがたくさんある。確かに不快なのもあるだろうが、逆に私は、そういう国に行くと、日本が殺菌された空間のように感じてしまう。「つるワキ」意味が分からない。女の脇などを気にする男がいるのだろうか。スネ毛くらいで情が冷める男がいるのだろうか。他人やマスコミから「次に気にすること」の基準まで配給されて、バカバカしい限りだ。「After all, wig is wig」(カツラは所詮、カツラである)いつか滞在したマニラの新聞で見た、育毛剤の広告だ。薄毛と肥満を気にし始めたら、先進国という。一理あるだろう。生活の不安が去ったら、人間は、どうでもいいことまで不安に思い始める。「彼らの生活は貧しい。だが、子供たちの目には光が宿り、我々を迎える笑顔は、わが国の子供たちからは、既に失われてしまったものである」。…とは、流行の「途上国支援」のボランティアをやってみた日本人の感想ではない。100年以上も前にわが国を訪れ、「朝鮮紀行」などの東アジア旅行記を書いたイギリスの作家イザベラ・バードの言葉だ。おしゃれをまったく気にしない私がファッションや美容について語るのも気が引けるが、成人の関心事が毛穴や体臭というのは、どうだろうか。ブログを更新した画面に、いつもDHCの広告が表れるのを見て、ふと、そう考えた。そう言えば、DHCの正式の社名は、Daigaku Honyaku Centerだ。つまり、研究機関向け出版業者だ。まぁ、そんな豆知識はどうでもいいのだろうが…。