147.家でダラダラ過ごすより・・・
※この文章は、2003~2006年に大学生・若手社会人向けに配信されたメルマガ『内定への一言』のバックナンバーです。147.「家でダラダラ過ごすより、お金を払って時間と習慣を買おう」 毎年この時期になると、3年生の「エントリーシート提出」が始まります。つい最近までは「何社エントリーした?」が話題だったかもしれませんね。その多寡は、内定とは全く関係がありません。大抵の人は毎年、何も考えずに、ただ名前を知っていそうな会社に闇雲にエントリーします。そして、1ヶ月くらいして2月を迎え、自分の行った申込の量に圧倒され、忙殺され、何の意思表示もせずに多くのチャンスを見送ります。 「メールが多すぎる」、「そんなに書けるか」、「面接早すぎ」という声も聞こえますが、そもそも、それは自分が申し込んだから送られてきた情報の結果。つまり、自分で自分に文句を言っている、というわけです。出会いサイトで複数の異性にあいさつをして、たくさん返事が来たら、「多すぎるったい」と言うようなものですね。多すぎるのは、その人の欲。後先考えず、今の不安や期待だけで動く人は、いつもこういう、感情の浮沈の激しい行動パターンのようです。精神衛生上、苦しそうです。 「50社エントリーしたぜ」なんて、実力でもない分、「東大のトイレに行ったことあるぜ」と変わらないのですが、こうして、たくさんエントリーして勝ち誇っていた人も、まだ企業と接していない段階にも関わらず、疲れ始めます。 あぁ、もったいない…。 初年度、よく理解できない学生の言動を前にして、僕はまず、「何が放置され、何が進んでいるか」を観察しました。そして、学生が書き上げたエントリーシートの文体を分析しました。去年もまた、傾向を感覚で分析しました。まだ、2年で250社(勝率86%)くらいしか添削していないのですが、その結果は… ・夜、自宅で仕上げたエントリーシートは、読んでも意味不明。・バイトや習い事をしている学生の方が、仕上がりが良い。・時間にゆとりがある学生ほど、提出直前に書き始める。・名案が浮かぶのを待ちながら、寝てしまう学生が多い。 というもの。つまり、「80対20の法則」の表現を借りれば、「至るところに、悲劇的なまでのムダが溢れている」という行動様式でした。 ということで、僕がFUNの顧問になってから、というか、サークルができる前からいるのですが、初年度から3年生に言っているのは、「大事な作業は、お金を払って外で片付けよう」ということです。 家は、休んで明日への英気を養う場所か、あるいは、くつろいでリラックスする場所です。そして、大事な作業を控えた人にとっての自宅は、「誘惑の巣窟」でもあります。辺りを見回せば、「今、これをしなくてもいいか」と自分を誘う物がいっぱい。「ちょっとくらいいいか…」と思ってテレビを見始めたり、ソファに転がったりしたら最後、今日仕上がるはずだった作業は確実に明日に引き延ばされ、明日の時間を食い潰します。 そして、そんな状態で仕上げたエントリーシートは、たとえ字数ギリギリまで書いていたとしても、とても読めたものではありません。学生が深夜に家で書いたESは、企業の明るいオフィスの中で、昼に、たくさんの部署の人に読まれるのです。そうやって「読む人」のことを考えてみると、「家で作業をする」ということは、とても期待に沿う結果をもたらす生産性を実現させてくれるものではない、というのが分かります。 だから大事な作業ほど、お金を払って、喫茶店かどこかで集中的に仕上げましょう。あなたがそう思って行けば、そこは、「仕上げるぞ」という目的の下で過ごす場所になります。 恐れるべきは、「時間がないこと」ではなく、「集中できないこと」です。 ES、SPI、履歴書、レポートなど、この時期の学生さんは、「片付けるべき作業」に追われているでしょう。しかし、作業は「追うもの」。今日のどこかに位置付けて仕留め、達成感とともに自信に変えるものです。家にいたって、お菓子やジュース、コンビニ弁当などで、どうせお金を使います。それで何も仕上がらなかったら、家にいながらにしてお金と時間を垂れ流しているだけで、もったないですよね。 仮に週に4日、就活や大学の作業をしたければ… ・ドトール 180円×4日×4週間=2,880円・ベローチェ 160円×4日×4週間=2,560円・スタバ 290円×4日×4週間=4,640円・マック 200円×4日×4週間=3,200円・プロント 240円×4日×4週間=3,840円 の計算です。これは、「飲食代」ではありません。決断力、集中力、継続力を鍛える「授業料」です。 家にいたら何時間たっても終わらない、というか手を付けようともしない作業が、お金で時間と場所を買って集中すれば、わずか2時間で格段に進みます。2時間で必要な量を片付けて、あとは思う存分、家に帰って休むなり、くつろぐなりすればいいわけですね。どっちを先にやるかが、社会人になってからの自分そのものだと考えれば、若いうちに少々のお金を投資して習慣を買う方が、ずっと賢明です。 要領が悪いのは、まだ直せます。しかし、着手が遅いのは性格の問題で、直りません。着手が遅い人は、世の中で最も貧しく、当てにされず、価値ある仕事は任されません。それに、取り掛かりが遅くては、万事良い結果は得られず、どんな作業もビクビクしながら取り組むことになり、人間が卑屈になります。習慣とは恐ろしいものです。卒業後にそうなったら、十万や百万では済まないしっぺ返しを食らいます。だから、必要な作業があれば、携帯電話を置いて、さっさとお近くの「勉強スペース」に旅立ちましょう。そして時間を買い、集中して作業に没頭し、習慣という配当を獲得しましょう。 意思の強さや集中力、継続力が月5,000円以下で買えるなんて、それこそ格安の学校です。気持ちが乗らない自宅で無理する必要はありません。自宅は休み、遊ぶ場所です。やるべき作業を延期して陥る「自己嫌悪」は心の毒。心が不健康になったら、良いESや面接は不可能です。「やるぞ~!」と家を飛び出し、その勢いで書類に向かえば、熱意が紙に刷り込まれます。 これはホントですよ。嘘だと思ったら、平日の朝に赤坂ベローチェに来てみて下さい。僕が一人(寂しく)、本を読んで仕事をしていますから。昨日は9時間ぶっ続けで集中し、来週から始まる「面接塾」のテキスト(1冊20ページ)を一気に完成させました。ということで、僕は別にカフェの回し者じゃなく、単なるお得意様ですが、今日は学生の皆さんに「時間を買って習慣を育てる大切さ」をお伝えしました。