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2005.02.03
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木間瀬精三『死の舞踏-西欧における死の表現』
~中公新書~、1974年~

目次は以下の通り。
ーーー
1章 生の無情
2章 死の教え
3章 死を憶えよ!
4章 ダンス・マカブル
5章 バロックと死
6章 騎士道の死
7章 自然美の死
ーーー

1347年、西欧をペスト(黒死病)が襲った(1348年にいっきに広まるため、こちらの年代が有名)。これには、ノミとネズミを媒介にしてリンパ腺の大きく腫れあがる腺ペストと、空気伝染で肺が侵される肺ペストの二種がある(池上俊一『歴史としての身体』128頁)。死亡率は、三分の一が妥当とされている(『西洋史辞典』)。ペストの広まる様子、人々の苦しみを、ボッカチオは『デカメロン』の中で描いている。中世後期、「死を憶えよ!」(Memento Mori!)というモットーほど、当時の人々の心を表現しているものはないであろう(10頁)。
ホルバインが描き、1538年に出版された『死の舞踏』には、様々な身分の人を死に導く「死」(骸骨で表される)が描かれている。死は、農夫にはその仕事を助けるなど、弱者には「よき人生の伴侶」であるが、身分の高い者たちは無情に死に導いていく。死は、あらゆる身分に平等に訪れるのだ。

第二章では、叙事詩『ベーベンのアッカーマン』が取り上げられる。アッカーマンは、最愛の妻を失い、「死」を非難するが、「死」は、「善人も悪人も等しく自分のものになる」と言い放ち、また、その役目は神から任されたものだ、と言う。こうして、アッカーマンと「死」が議論をかわす。「死」の言葉の中に、印象的なものがあったので、紹介しておこう。「愛が大きければ大きいほど、苦しみ悩みも大きいということである。おまえが愛を慎んでいたなら、苦しみも避けられたろうに」(24頁)。15世紀の作品であるが、考えさせられる言葉だと思う。
第二章ではまた、『往生術』(Ars Moriendi)も紹介される。臨終の床に悪魔と天使が現れる。悪魔はなんとか死にいく人を誘惑しようとする。『往生術』は、そうした誘惑と苦悩について前もって心得ておくべきことを教えるものである(31頁)。悪魔の誘惑に負けそうになる人を、天使が正しい道に導く。このあたりの描写はとても面白い。

第三章では、「三人の死者と三人の生者」という主題が扱われる。詩と絵に関わる主題。この形式は、仏教説話にその起源が求められるという(46頁)。ちなみに、仏陀はローマ教会の聖人の一人として定着しているという(47頁)。これにはびっくりした。

第四章では、「ダンス・マカブル」(死の踊り)が扱われる。あらゆる身分の人が、死後の自分の姿にそわれている。16世紀にはしかし、その屍は普遍的な「死」であると認識されるにいたる。

第五章「バロックと死」は省略(日記が長くなりそうなのと、理解が浅いため)。

第六章は「騎士道の死」という題だが、死については殆ど扱われない。ギョーム・ド・ロリスと、彼の作品に手を加えたジャン・ド・マンによる『ばら物語』について論じられている。『ばら物語』には女性蔑視の態度が明示されていた。これに対して、クリスティーヌ・ド・ピザンが非難する。彼女は、「イタリアの人文主義をフランスに普及せしめた功労者の一人」(146頁)であり、また、多くの文学書により傷つけられた女性の名誉を弁護し、婦人の権利を主張することに激しい情熱を注いだ(138頁)。彼女の『ばら物語』への非難は、彼女への反論者と支持者をうみ、ばら物語論争が起こった。…ということで、死というよりは女性問題を扱った章。しかし、とても興味深かった。

第七章、自然美の死、も、あまり死に関しては論じていない。マニリズム(ルネッサンスとゴシックの中間の文化史的時代概念)の絵画作品について論じられている。バスティアン・ブラントの『阿呆船』と、これに影響されたとされるヒエロニムス・ボスが論じられるあたりは興味深く読んだ。ヒエロニムス・ボスの絵は好きなので。





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Last updated  2007.08.19 18:43:37
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