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2023.12.23
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石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』
~講談社現代新書、2000年~


 著者の石田かおり先生は現在、駒沢女子大学人間総合学群人間文化学類人間関係専攻の教授で、化粧の文化史や身体文化論がご専門です。
 本書はタイトルのとおり、化粧の観点から人間の歴史を読み解きます。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
はじめに―人間は化粧なしでも生きられる
第1章 「裸は自然」の謎
第2章 清潔が化粧を駆逐する
第3章 東西化粧狂騒史
第4章 美人は本当に「色白」か
第5章 男は本来化粧好き
第6章 コミュニケーションとしての化粧
あとがき

主な参考文献と読書案内
―――

 化粧とは、いわゆるメークを思い浮かべますが、本書では、スキンケア、シャンプーでの洗髪などを含めた、「人間の身体を加工する行為」と最も広い範囲で化粧をとらえることを基本的な立場としています。
 第1章は、化粧からはイメージが最も遠い「裸」から話が始まりますが、ここでは「裸=自然/着衣=文明」という二項対立的な思考や、裸体さえも理想とされる流行があることなどが指摘されます。
 第2章は清潔をテーマに、入浴、衛生などについて論じます。
 第3章は、本書のタイトルからイメージされる、化粧をめぐる通史で、ページ数からも、本書の中心といって良いと思います。ここでは、まず日本史を化粧の観点から13の時代に区分する図式を提示し、それぞれの時代について、同時代の世界にも言及しながら化粧の様相をたどります。体臭と香り、眉の形、かつらなど、化粧をめぐる様々な観点から議論が展開されます、また、(本書全体を通して)複数の図版が掲載されていますが、本章では、縄文時代のクシの写真が興味深かったです。
 第4章は、「美人=色白」というのは普遍的な価値観ではないということを、縄文時代以降の赤化粧からの議論で示しています。また、前章にも通じますが理想とされる眉の形や、白粉の材料が人体に有害であったこと、電気の発明と化粧術など、興味深い話が満載です。
 第5章は男性の化粧ということで、平安時代以降の日本の男性の化粧をたどります。冒頭近くの、平氏はお歯黒をし、源氏はお歯黒をしていなかったという指摘が興味深かったです。
 第6章では、文化により美の基準が違うということをあらためて指摘し、いわゆる首長族、中国の纏足などをとりあげます。ここでは、ある一時代の流行で理想とされる見た目を追うあまりに、思い悩んだりする必要はない、という趣旨の主張、そして同時に広い意味での化粧の重要性を説く部分が重要だと思われました。
 ざっとしたメモになりましたが、興味深い1冊です。

(2023.07.29読了)

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Last updated  2023.12.23 12:47:48
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 Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23)   シモン さん
年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うございます。

化粧=身体の加工、確かにそのような捉え方が出来ますね。
料理=食物の加工、都市開発=自然の加工、というように、人間はすべからく「加工」することによって生きる生物なんですね。

自分自身は化粧したことは一度もないと思っていましたが、広い意味で言えば散髪も「化粧」の一種かもしれませんね。

化粧ではありませんが、やはり講談社の現代新書の装丁は現在の無機質なデザインよりも杉浦康平デザインの方が好きです。

今年も一年、興味深い書籍のご紹介を有難うございました。
良い新年をお迎えください。
(2023.12.30 11:31:18)

 シモンさんへ   のぽねこ さん
コメントありがとうございます。
久々の再読でしたが、いまなお興味深い1冊でした。

装丁の件は同感です。一時期あったと記憶している、背表紙の色が1冊ごとにバラバラのような状態よりはよくなりましたが(そういえば、その頃の現代新書は1冊も買っていないです)、関連する絵だけでなく、表紙に概要、裏表紙に目次から抜粋の概要が掲載されていて、それだけで要点が把握できるつくりとなっていたのも素敵でした。
装丁者のお名前は把握していませんでしたが、シモン様のご指摘であらためて勉強になりました。

あらためて、こちらこそ、本年もあたたかいコメントをお寄せいただき、ありがとうございました。
良い新年をお迎えください。 (2023.12.30 23:25:13)

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 シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
 のぽねこ@ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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