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2005.08.26
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ロベール・エルツ『右手の優越』
~垣内出版、1985年~

 本書には、「死の宗教社会学」と「右手の優越」という二つの論文が収録されています。「右手の優越」については先日記事をアップしました。こちらです。(楽天広場の新しいオプションの「LINK」ボタンを使用しました。なんて便利!)
 さて、ここでは「死の宗教社会学」について簡単に紹介します。ノートもとってないので、たいしたことは書けないと思いますが…。
 この論文では、死に関する諸信仰と葬儀の全体についてが考察されるのですが、そのために二重葬儀という儀礼が取り上げられています。人間が、物理的(生物学的)に死亡する、「普通、用いられる意味での死」と、「本番の葬儀」までに、あいだの期間があるのです。
 本論文の構成は、「一 あいだの期間」「二 最終の儀式」「結び」となっています。なお、具体的に検討されるのは、インドネシアの諸民族、とくにボルネオのダヤク族です。以下の紹介では、どこの事例だとかは省略します。
 第一章。死は、遺体に関係しているか、魂に関係しているか、残った生者に関係しているかによって、三つに分けることができます。この三つの事項について、順次論じられます。
 (1)遺体とその仮りの墓場
 遺体は、「最終の墓場」に運ばれる前に、「仮の墓場」に移されます。そこでの待機期間は、普通二年くらい、これを超えることも多いそうです。通常、「死体が骸骨の状態になるのに必要な期間」に相当し、他の要因もからんでくるといいます。この期間、死体は非常に危険な状態にさらされているため、呪術的な手続きがふまれるのです。一つには、「通夜」がありますね。
 (2)魂とその地上での仮り住まい
 魂は、死後すぐに死者の国に入るのではなく、しばらくは地上にとどまるといいます。酋長が死んでも、決定的に埋葬されるまでは、跡とりは正式に名乗ることができない、という事例が紹介されます。
 (3)生者とその喪
 「死の穢れ」が、死者の親族におよぶため、親族は日常生活とは異なる生活を送ることになります。服喪からすっかり解放されるまでの期間は、仮の埋葬までの期間とぴったり一致するといいます。「仮の埋葬までの期間」って、仮の埋葬が終わるまで、という意味ですかね。だとしたら、誤解を招く表現のような気がします。私の読み違いかもしれませんが。あ、近親食肉慣行の事例が紹介されていますね。テンションが上がったのでしょう、私は赤チェックをいれています。
 第二章。最終の儀式は、次の三つの目的をもっているといいます。遺体に最後の墓場を用意すること。魂に安らぎを与え、死者の国に行かせるようにすること。生者たちから、服喪の義務を取り去ること、です。これら三つについて、順次論じられます。
 (1)最後の墓場
 仮の墓場が一般的に孤立しているのに対して、最後の墓場は、先祖たちの遺体と一緒に葬る場所となっています。つまり、「集合的な性格、少なくとも家族的な性格」をもっているのです。私の関心もあり、聖者の遺骨への崇拝について論じられているところには、ふせんを貼りました。
 (2)死者の国への魂の旅立ち
 本書の内容とは少し離れるのですが、現在、Bloomfield, The Seven Deadly Sinsという本を読み進めています。この中でSoul Journyについて論じられている部分があるのですが、この節を読んでいてそれを連想しました。「魂は、七世のあいだ、天界にとどまっている」(本書86頁)。Bloomfieldの著書の中にも、死後の七つの段階stage(より適切な訳語があると思うのですが…)について論じている部分がありました。
 (3)生者の解放
 人身御供、トーテミズムなどについて論じられます。本論文の中で中心的にみてきたインドネシアの事例と、オーストラリアの事例が比較検討されています。また、「死者の《社会》をつくることで、生者の《社会》が規則的に再生されていく」という指摘には、うなずきました。
 結びの部分では、これまで見てきた「普通の葬儀」とは異なる、例外の事例も紹介されています。
 本書では、原著にあった注はすべて割愛されています。ただ、どこから引用しているのか気になる部分もあるわけですから、少し不満を感じました。もっとも、注をさかのぼって読むような余裕は今はありませんが…。

 三年ほど前に、ピーター・メトカーフ/リチャード・ハンティントン『死の儀礼―葬送儀礼の人類学的研究―』を読んだ際、その参考文献一覧に本書が挙げられていて、チェックをつけていたのですが、ようやく読むことができました。

ーーー
追記。昨日、合宿から帰ってきました。宮島良かったです。大鳥居を見たときにはテンション上がりました。





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Last updated  2005.08.26 16:22:49
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