カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
佐飛通俊『アインシュタイン・ゲーム』 ~講談社ノベルス、2006年~ 1922年、来日していたアインシュタイン博士は、奈良県のある村で、事件に遭遇する。道に迷ってしまった博士のもとへ駆けつけてきた、言葉が話せない男。男は、博士を蔵の前に連れて行き、鍵がかかっていることを示した。そこへ出てきた、男の家族。家族が蔵を開けると、そこには男が倒れていた。事態をさとり、、博士が警察を呼びに出た。警察とともに博士が蔵に戻ると、男が血まみれの斧を持っていた。蔵にはばらばらの死体があった。 * ザナドゥ鈴木は、1922年にアインシュタインが遭遇した事件について、真相を文章にするつもりでいた。自殺した男を、言葉の話せない男―被害者の召使い―が恨みにまかせてばらばらにしたと思われたが、博士が、「あれは自殺ではない」というメモを残していたのである。 一方、依頼を受け、相対性理論によって若返ろうという怪しげなセミナーに参加する。そこに居合わせた団体職員の白冷とともに、ザナドゥはいんちきを暴露する。いんちき主催者の一人―南無井新二とともに、三人で酒を飲むことになるが、新二に飲み逃げされる。 後日、奇人として有名な新二の父親、存在が新理論を発表するということで、南無井家が経営する旅館でパーティーが開催される。存在と、その二人の子どもたちはいがみあっており、その機会に存在の遺言が発表された。遺言の発表に居合わせなかった存在は、殺されていた。遺言発表の場であったコロシアムにつらなる二つの塔。塔の上の部屋に存在はこもったのだが、一度女性が確認したときには、そこには死体はなかった。しかしその後、ザナドゥたちが部屋を確認したときには、絞殺された存在の死体があったのだった。 いやはや、どうにも疲れがたまっているようで、ずいぶん昼寝しながら読んだのもあり、ぱっとしなかったというのが感想です。ミステリとしては面白いかもしれませんが、別段目新しさはありませんし(存在殺人の真相はたしかに面白いと思いましたが)、著者の言葉で、「笑い」がコンセプトとしてあげられていますけれども、残念ながらそんなに笑えませんでしたし。笑わせようと思われるくだりが、むしろ歪でした。同じくメフィスト賞作家の石崎幸二さんの方がはるかに面白いと思います(謎解きの過程も笑いの要素も)。石崎さんが、しばらく作品を出してないのが残念ですが…。 表紙は、ポップな感じを出そうとしていながら基本的に歪で不気味だと感じますが、本作の感想もそんなところです。残念でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.08.13 16:11:34
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