カテゴリ:本の感想(か行の作家)
北村薫『覆面作家は二人いる』 ~角川文庫、1997年~ 北村薫さんの、覆面作家シリーズ第一作です。三つの短編が収録されています。以下、それぞれの簡単に内容紹介と、全体の感想を。 「覆面作家のクリスマス」左近先輩に、一つの原稿を渡された、編集者の岡部良介。面白い作品だから、ぜひ作者の「新妻千秋」のもとを訪れるよう言われ、彼女のもとを訪れる。そこはとんでもない豪邸で、千秋本人は、清楚で美しい女性だった。 クリスマスが近づいた頃、良介の双子の兄にして刑事の優介は、女子寮で起こった殺人事件を担当することになった。事件の話を聞いた良介が千秋に話をすると、彼女は事件の真相を見抜いたらしく、二人で女子寮に向かうことになる。 …が、敷地から出たとたん、千秋の人格は変貌するのだった。 「眠る覆面作家」今度は、優介は身代金誘拐を手がけることになった。身代金の受け渡し場所に赴いた優介は、犯人とおぼしき若い女性に投げ飛ばされてしまう。…それは、同じ場所で良介と待ち合わせしていたために勘違いした、千秋だった。 後に、千秋は良介から誘拐事件の顛末を聞き、真相を見破る。 「覆面作家は二人いる」左近先輩のお姉さんがガードウーマンをつとめているデパートのCD店で、万引きが増えていた。増え始めたのは、ブザーが鳴ったために中学生を問い詰めたにもかかわらず、その子がどこにもCDを持っていないという出来事があってからだった。 数年ぶりの再読です。だいたい、通勤時間+αで読める文庫を、最近は仕事に行くときの友(夏休みの友のニュアンスで)にしているのですが、こちらもうってつけの一冊でした。 とても軽い読み物だと思います。文体も警戒で、登場人物のやりとりにもユーモアがあり、楽しく読めます。いわゆる「日常の謎」系統のミステリは、どこか深刻な気分にもさせられることが多いのですが、この作品はさほどそんなでもありませんでした。 内弁慶の反対、<外弁慶>の千秋さんと、その担当編集者の岡部良介さんが繰り広げる痛快なやりとりが良いですね。割と早い段階から、優介さんも千秋さんと関わることになりますが、そちらも楽しいです。 個人的には、全く忘れてしまっていたのですが、カバー絵と挿画を、高野文子さんが手がけていらっしゃるのが嬉しかったです。高野さんの作品は『るきさん』しか読んだことがありませんが、そのほのぼのした絵が好きなのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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