カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』 ~講談社ノベルス、1994年第1刷(1997年第11刷)~ 「臨床犯罪学者」&作家アリスシリーズの第一短編集です。6編の短編が収録されています。それでは、簡単な内容紹介と感想を。 「動物園の暗号」動物園の飼育園が猿山で死んでいた。被害者は、生前、動物の名前を列挙した「暗号」を作り、他の飼育員に謎かけをしていた。被害者は、この「暗号」を握りしめて死亡していた。 「屋根裏の散歩者」江戸川乱歩の小説のように、アパートの屋根裏を歩き回り、入居者の様子を観察していた大家が殺された。大家は、世間を騒がせている、連続女性暴行事件の犯人をつかんだために殺されたらしい。大家がつけていた日記には、入居者が「大」「ト」などあだ名をつけて記されており、その記述だけでは、犯人を特定するのが困難だった。 「赤い稲妻」弁護士の愛人が、マンションの7階から転落死した。その直前の光景を目撃していた証言者によれば、その部屋には二人いるようだったとのことだが、被害者のマンションの一室は、内側から施錠されていた。それから間もなく、その弁護士の妻が、踏切内に車で立ち往生しているところに電車が衝突し、死亡した。 「ルーンの導き」火村が2年前に関わっていた事件。いろんな国籍の人々がパーティーに集まった中、中国系アメリカ人が殺害された。被害者は、ルーン文字の刻まれた石を4つ握りしめていた。 「ロシア紅茶の謎」新鋭の作詞家が、衆人環視の中、毒殺された。毒はロシア紅茶に入れられていたが、誰にも毒を入れる機会はないように思われた。 「八角形の罠」アリス原案のミステリの舞台の、稽古を見に行ったアリスと火村。しかし、劇団員の中では、一人の男を中心にいさかいが起こっており、不穏な空気が漂っていた。ついに、その男が殺されたが、現場周辺に凶器は見あたらなかった。現場に居合わせた関係者は誰も、凶器を処分することができなかったように思われた。 ーーー 私がはじめて読んだ有栖川さんの作品です。1997年に買って読んだので、初読からもう10年になるのですね。その後何度も読み返している作品でもあります。 「動物園の暗号」は、殺人事件よりも暗号にウェイトがあり、「屋根裏の散歩者」は、それをやっちゃぁ…という解決。いずれも暗号が中心なので、事件あるいは暗号の解読がとってつけたような感じが否めない部分もあります。 「赤い稲妻」は、密室事件を扱っていて、初読のときからこれは面白いと思った作品。 「ルーンの導き」はダイイングメッセージものですが、ダイイングメッセージそのものの解読はとってつけたような感じにはなります。そちらが、ネタの中心ではあるのですが。 「ロシア紅茶の謎」。衆人環視の中の毒殺事件。こちらも面白かったです。フーダニットとトリックの妙。 「八角形の罠」。読者への挑戦も挿入されたフーダニット中心の作品。このトリックも面白いですね。 今回読み直してみて、暗号ものはちょっと物足りない感じも受けましたが、全体的に面白い作品集です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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