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2011.12.23
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橋爪大三郎『はじめての構造主義』
~講談社現代新書、1988年~

 アナール学派に関する著作(たとえば、ピーター・バーク『フランス歴史学革命』)などなど、史学史や歴史学の方法論にふれていると、避けて通れない人物の一人が、レヴィ=ストロースです。そしてその方法論である、「構造主義」。
 なんとなく聞きかじってきていますが、あらためてそれがどんな思想(方法論)なのか、といわれると、十分な理解はできていません。
 そこで、易しく軽快な語り口でありながら、その本質を分かりやすく解説する本書を読んでみました。
 あれこれつめこむのではなく、自分の主張のポイントを絞り、そのポイントについては詳しく記述するという、はっきりした構成が嬉しい一冊です。
 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
はしがき
第一章 「構造主義」とはなにか
第二章 レヴィ=ストロース:構造主義の旗揚げ
第三章 構造主義のルーツ
第四章 構造主義に関わる人びと:ブックガイド風に
第五章 結び
ーーー

※以下の感想は、構造主義とは何か、ということをまとめてはいません。
 あくまで、興味深く読んだ点や、感じたことのメモです。

 第一章では、構造主義のインパクトと、世間が構造主義に抱くイメージが中心に論じられます。
 それまで主流だったマルクス主義的な歴史観(資本主義→共産主義へ)、そしてその歴史に個人が参加できると説いたサルトルに対して、レヴィ=ストロースの考えは、そうした歴史観はヨーロッパ人の錯覚に過ぎない、と主張するものでした。
 西欧的な意味での「主体」を否定することにつながる構造主義のインパクトは大きいものでした。同時に、「構造主義は反人間主義だ」というイメージも生まれます。
 それでは、構造主義とはどういう考え方なのか?
 それは、本書の二本柱である第二章と第三章で、特にレヴィ=ストロースの思想について深く論じられることになります。

 第二章は、レヴィ=ストロースの経歴を見ながら、その知的背景を探り、また彼の具体的な研究方法を見ていきます。ここでは、ごく簡単に、重点や印象に残った点についてメモをしておきます。
 1908年、ベルギーに生まれたクロード・レヴィ=ストロースは、第二次世界大戦のさなか、アメリカに亡命します。亡命先で出会った言語学者、ローマン・ヤーコブソンに出会ったことは、レヴィ=ストロースの研究にとって重要な意義をもちました。というのも、ヤーコブソンから紹介された著名な言語学者ソシュールの研究方法が、後の「構造主義」の方法につながることになるからです。
 ここでは、有名ですが実際にはよく知らないソシュールの研究がどういったものなのか、要領よくまとめられていて、勉強になりました。
 そして、「贈与論」という論文を発表したモースも、レヴィ=ストロースの研究に大きな影響を与えます。
 二人の著名人の研究方法の影響を受けつつ、彼は人類学上の難問のひとつであった、インセスト(近親.相姦)・タブーに関わる問題に、答えを出したのでした。
   *
 人類学研究にくわえ、レヴィ=ストロースは神話の研究でも新しい方法を生み出します。
 それは、物語の筋を追うだけでなく、その中にいくつかのテーマが隠されていて、それらのテーマが少しずつ形を変えて現れているのだ、という分析方法のようです。
 著者は、あまり良い例ではないとしながらも、オイディプスの物語についてのレヴィ=ストロースによる分析を挙げています。
 人類学の研究については「なるほど!」とよく分かりましたが、こちらはなかなか難しかったです。言わんとすることは分からないでもないのですが、いくらでも恣意的な解釈ができてしまうのでは、と素人ながら考えてしまいました。

 第三章は、レヴィ=ストロースの構造主義のルーツとして、数学を見ていきます。
 繰り返しになりますが、これが本書の柱の一つであり、またユニークな点でもあるのだろうと思います。構造主義についてほとんど勉強していない私が、本書のみ読んで「ユニーク」というのはおかしいですが、しかし史学史関係の本で何度かレヴィ=ストロースの名は目にしているものの、数学との関連につっこんでいる叙述は読んだことがないような気がします。
 この章は、まず、古代ギリシャから現代にいたるまでの、主要な公理・法則について見ていきます。単純に、それだけでも勉強になりました。
 レヴィ=ストロースの方法との類似性を論じる部分も、なるほど、と思いつつ、なかなか十分には理解できたとは言い難いです。

 第四章は、その標題どおり、構造主義やポスト構造主義と言われる有名な人々の紹介や、有名な著作の紹介となっています。
 この中に出てくる人々は、私が何冊か読んでいる史学史関係の本にも登場していて、あらためて勉強になりました。

 私が勉強してきている、いわゆるアナール学派の歴史家たちに、レヴィ=ストロースなどの構造主義の人々が影響を与えている、ということはいろいろと読んできました。
 今回あらためて、構造主義とはどんな考え方なのか、その背景も含めて勉強できて良かったです。
 楽しく、興味深く読めた1冊です。

 最後に、印象的で、共感できた部分を引用しておきます。

日本のモダニズム(近代思想)は主として明治期に、政府(国家権力)が外国から導入したものである。モダニズムはもともと、権力から自立をはかるべく、市民階級が自分たちの手でうみだしたもののはずだから、このこと自体、グロテスクなことだ」(226頁)





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Last updated  2011.12.23 22:43:03
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