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2014.02.08
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朝倉文市『修道院―禁欲と観想の中世―』
~講談社現代新書、1995年~


 朝倉文市先生は、ノートルダム清心女子大学名誉教授で、西欧中世文化史、特に修道院の歴史の大家です。
 本書は、古代末期から中世末期までの修道院の歴史の概要を分かりやすくまとめた一冊となっています。
 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
プロローグ
第1章 禁欲の起源
第2章 殉教から修道制へ
第3章 東方修道制の夜明け
第4章 西方修道制の始まり
第5章 『聖ベネディクトゥス戒律』の普及
第6章 改革修道院クリュニー
第7章 修道士の日常生活
第8章 源泉への回帰―十一世紀の修道院改革と聖堂参事会
第9章 シトー会の誕生
第10章 托鉢修道会の出現
第11章 中世末期の修道制
エピローグ―日本人と修道院

主な参考文献
ーーー

 簡単にメモをしておきます。

 修道制は、3世紀頃のエジプトから始まったとされています。霊的な動機から人里をはなれ、苦行にいそしむ人々は、隠修士と呼ばれます。もともとは個人的な動機から孤独に生きようとするわけですが、しかし生きていくためには外部との接触も必要である、ということで、集団化していきます。

 さらに東方にて修道制は続いていくわけですが、4世紀半ば過ぎころから、西方でも修道制が始まったとされます。面白いのは、この時代の特徴として、修道士の遍歴が重要だったことです。アイルランドの修道士たち(たとえば聖コロンバヌス)は、フランクやイタリアまで遍歴し、重要な修道院を建てました。

 そして、6世紀半ば頃、「祈り、働け」で有名な『聖ベネディクトゥス戒律』が生まれ、西方に普及していきます。この流れをくむのが、有名なクリュニー修道院(会)ですが、故人や寄付者たちのための祈り(執り成し)に特化していき、やがて自ら働く時間が減っていきます。しかし、修道会の拡大、寄進の増加などでの富の拡大により、クリュニーは腐敗していき、やがてこれを批判するシトー会などの革新運動が起こります(11世紀)。けれど、もともとは人里離れて作られたシトー会系の修道院も、やがて富を蓄えていく…。

 歴史は繰り返す、ではないですが、尊い理念や偉大な人物によって立ち上げられた修道院が、組織の拡大や世俗とのつながりによって元の理念を失っていく、というのが、修道院の歴史を勉強していて面白いと感じる要素の一つです(あまりに単純に図式化してしまうことに注意すべきなのはもちろん承知していますが…)。

 他方、11-12世紀頃、福音に従おうという動きが出てきて、遍歴説教師たちにより多くの修道院(会)が設立されます。そして13世紀には、ドミニコ会とフランシスコ会をはじめとする、修道院という場の中に閉じこもるのではなく、都市のなかで説教を行うことを中心とする托鉢修道会が登場します。

 …と、ざっと通史的なメモをとりましたが、本書のなかで興味深いのは、修道士の生活に一章が割かれていることです。祈りや食事の時間、労働のあり方などが簡潔にまとめられていています。特に、一日の流れが表で示されているのが興味深いです。

 通読したのは2度目ですが、やはり勉強になります。修道院の歴史の概要をつかむのにうってつけの一冊だと思います。





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Last updated  2014.02.08 15:29:28
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 のぽねこ@ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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