カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
島田荘司『『改訂完全版 奇想、天を動かす』 それでは、簡単に内容紹介(2007年のブログ記事をほぼ再録)と感想を。 * 取り調べ室でも薄笑いを浮かべ続け、言葉を発しない浮浪者。吉敷の相棒の小谷も、主任も、ボケ老人が消費税を払いたくないために起こした殺人事件だと考えるようだが、吉敷は納得できなかった。この老人は、決してボケ老人ではない、高い知性があるのではないか―。 * 桜井と老人の前身を調査している吉敷に、方々から連絡が入る。老人は、宮城県刑務所に長年入所していた、行川という男だということが分かると、吉敷は宮城県に趣く。行川をよく知る人物と話をして、彼が小説を書いていたことが分かった。それは、電車の中で踊っていたピエロが、密室状態のトイレの中で自殺し、確認した人々が30秒ほどドアを閉めていた間に、その死体が忽然と消えてしまったという物語や、白い巨人の手で、別の路線の電車に「私」が運ばれたという話など、ミステリーとも幻想小説ともつかない物語だった。 * 行川の小説が雑誌に取り上げられてから、北海道の牛越刑事から吉敷に連絡が入る。小説に描かれている通りの、あるいはそれ以上の事件が、昭和32年(1957年)にあったという。 飛び込み自殺、踊るピエロ。ピエロはトイレの中で拳銃により自殺。トイレの中は、蝋燭が並べられており、便器に死体が横たわっていた。現場保全のために車掌がドアを閉めたものの、蝋燭の火を消さないと危ないということで、あらためてドアを開けたとき、そこに死体はなかった。電車に乗せられていた、飛び込み自殺者の死体が立ち上がり動き回った後には、電車は高く舞い上がり、脱線していた。そして、投げ出された機関士は、白い巨人が立っているのを目にした……。 ――― (2021.02.08読了) ・さ行の作家一覧へお気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2021.07.03 23:13:10
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